2018年5月22日、抗菌薬テジゾリドリン酸エステル(商品名シベクトロ錠200mg、同点滴静注用200mg)が薬価収載された。適応は「テジゾリドに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染」、用法用量は「成人は1日1回200mg、点滴静注は1時間かけて投与」。

 近年、種々の多種薬剤耐性菌による院内感染が世界中で脅威となっており、中でもMRSAは、欧米で院内感染型のMRSA(HA-MRSA)に加え、市中感染型のMRSA(CA-MRSA)が増加傾向にあり、死亡例も増加しつつある。

 日本でも、種々の多剤耐性菌による院内感染および市中感染が問題となっており、MRSAは薬剤耐性菌新規感染症の多くを占めていることが報告されている。そして、肺炎や菌血症などでのHA-MRSA、皮膚・軟部組織感染症から分離される強毒型のCA-MRSAの分離率は増加傾向にあり、伝播力も強いことから更なるMRSA感染症の増加が懸念されている。

 日本における抗MRSA薬にはグリコペプチド系薬バンコマイシン(VCM:塩酸バンコマイシン他)およびテイコプラニン(TEIC:タゴシッド他)、アミノグリコシド系薬アルベカシン(ABK:ハベカシン他)、オキサゾリジノン系薬リネゾリド(LZD:ザイボックス)、環状リポペプチド系薬ダプトマイシン(DAP:キュビシン)が臨床使用されている。これらの薬剤では有効性は高いものの、副作用等の問題も指摘されていた。VCM、TEIC、ABKでは腎毒性や第8脳神経障害などの副作用があり、薬物血中濃度モニタリング(TDM)や腎機能障害患者において用量調節が必要となっていた。また、DAPは横紋筋融解症など骨格筋関連の副作用があるほか、腎機能障害患者では投与中に頻回の腎機能モニタリングが必要だった。

 テジゾリドは、既存のLZDと同じリボソームの50Sサブユニットに結合して70S開始複合体の形成を阻害することにより、細菌の蛋白合成が阻害され、菌の増殖を抑制するオキサゾリジノン系の抗MRSA薬である。しかし、LZDは1日2回投与製剤であり、さらに投与により血小板減少症を主とする骨髄抑制が生じることで、14日を超える長期投与では注意が必要といわれている。1日1回投与のテジゾリドは、LZDと同様に、経口剤(錠剤)と注射剤(点滴静注)があるが、腎機能低下例においても用法・用量の調節の必要はなく、絶対的バイオアベイラビリティが高いことから、静脈内投与から経口投与に同じ用量で切り替えることができる、といった薬物動態面での特徴も持っている。

 承認時までの皮膚・軟部組織感染症患者を対象とした国内第3相試験では、テジゾリドの臨床効果(治癒率)や微生物学的効果(消失率)に関して有効性が確認された。海外では、2017年11月現在、米国をはじめとして世界51の国または地域で承認されている。

 国内第3相試験から副作用(臨床検査値異常を含む)が30.1%認められている。主な副作用としてALT(GPT)上昇(4.8%)、AST(GOT)上昇、注射部位紅斑(各3.6%)などが認められた。また、重大な副作用として偽膜性大腸炎、骨髄抑制(可逆的な貧血・白血球減少・汎血球減少・血小板減少など)、代謝性アシドーシス、視神経症があらわれる可能性があるので注意する。