2018年6月6日、mTOR阻害薬シロリムスの外用ゲル製剤(商品名ラパリムスゲル0.2%)が発売された。適応は「結節性硬化症に伴う皮膚病変」、用法用量は「1日2回、患部に適量を塗布」となっている。同一成分としては経口製剤(錠剤)が「リンパ脈管筋腫症」の適応で2014年12月より臨床使用されている。

 結節性硬化症TSC)は、全身の過誤腫(腫瘍と奇形の中間的な性格の病変)を特徴とする常染色体優性遺伝の希少疾病である。TSCの原因遺伝子としては、9番染色体上のTSC1遺伝子または16番染色体上のTSC2遺伝子が同定されており、これらの遺伝子の異常により、下流のmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)が活性化され細胞増殖等が促進される。その結果、細胞の成長や増殖が亢進し、アポトーシスが抑制され、皮膚、脳、肺、心臓、腎臓および骨などほぼ全身に良性腫瘍を生じるとともに、行動異常や精神発達遅延、てんかんなど中枢神経症状を呈する。

 これまでに、TSCによる各種疾患に対してmTOR阻害薬であるエベロリムス経口製剤(アフィニトール)が臨床使用されている。しかし、エベロリムスの適応はTSCに伴う腎血管筋脂肪腫および上衣下巨細胞性星細胞腫であり、顔の血管線維腫と線維性頭部局面(または前額線維性局面)の皮膚病変に対しては、レーザー、液体窒素を用いた冷凍凝固術または外科的治療などしかなかった。しかしこれらは侵襲性が高く、術後瘢痕が残るなどの課題も多い。

 シロリムス外用ゲル製剤は、TSCの皮膚病変の治療薬として非侵襲で局所的効果が期待できる世界初となる薬剤である。日本人TSC患者を対象とした12週間投与の1日2回のプラセボ対照二重盲検試験(国内検証試験)では、血管線維腫などでの有効性や長期投与試験(12ヵ月)での安全性も確認された。本製剤は、2015年10月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、同年12月に希少疾病用医薬品に指定されていた。

 承認時までの臨床試験から70.3%に副作用が認められている。主な副作用は皮膚乾燥(30.4%)、適用部位刺激感(27.0%)、ざ瘡(10.1%)、そう痒症(8.8%)、ざ瘡様皮膚炎(6.1%)、眼刺激(5.4%)など。

 なお、光線過敏症が発現するおそれがあるので、薬剤使用時は日光または日焼けランプ等による過度の紫外線曝露を避けること、また治療開始12週以内に症状の改善が認められない場合には薬剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないことなどに留意しておく。