2018年5月16日、癌疼痛治療薬ヒドロモルフォン塩酸塩の注射製剤(商品名ナルベイン注2mg、同注20mg)が発売された。適応は「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」、用法用量は「1日0.5〜25mgを持続静脈内または持続皮下投与。なお、症状に応じて適宜増減」。なお、同一成分としては、2017年6月から経口製剤[即放製剤(ナルラピド)、徐放製剤(ナルサス)]が臨床使用されている。

 様々な癌で認められる疼痛は、神経学的な分類として侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に大別される。さらに侵害受容性疼痛は、皮膚や骨などの体性組織への機械的刺激が原因の体性痛と、食道や胃腸などの管腔臓器の内圧上昇、肝臓や腎臓など被膜を持つ固型臓器の被膜の急激な進展、および臓器局所や周囲組織の炎症によって起こる内臓痛の2つに細分化される。

 これらの癌疼痛治療においては、WHOガイドラインである「WHO方式癌疼痛治療」に基づいて非オピオイド鎮痛薬やオピオイド鎮痛薬などが臨床現場で汎用されているが、中でも、軽症から中等度以上の強さの疼痛ではオピオイド鎮痛薬が治療薬の主流となっている。

 ヒドロモルフォンは、WHOガイドラインに加え、欧州緩和ケア学会(EAPC)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)、全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)の各ガイドラインでも、既存のモルヒネ(アンペック他)、オキシコドン(オキシコンチン他)と同様に中等度から高度の癌疼痛治療に用いる強オピオイド鎮痛薬として標準薬剤と位置づけられており、さらに、オピオイドスイッチングを含めた鎮痛治療に欠かせない薬剤となっている。

 国内では、ヒドロモルフォンの経口製剤および注射製剤が「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で高い評価がなされたことで、2017年に経口製剤の承認・臨床使用が可能となった。また、注射製剤は経口投与または貼付剤で十分な鎮痛効果が得られない場合に有用性が高く、新たな治療選択肢として期待されていた。

 承認時までの中等度から高度の日本人癌疼痛患者に対する国内臨床試験から、持続静脈内または持続皮下投与での有効性(疼痛コントロール達成率、臨時追加投与時)が確認された。また、海外でヒドロモルフォンは、2017年現在、米国や英国など世界43の国および地域で承認されている。

 国内臨床試験から副作用(臨床検査値異常を含む)が38.5%認められている。主なものは傾眠(22.0%)、悪心(8.8%)、嘔吐、便秘(各6.6%)などであり、重大なものは依存性、呼吸抑制、意識障害、イレウス(麻痺性イレウスを含む)、中毒性巨大結腸が報告されている。

 薬剤使用に際しては、2mg(0.2%)と20mg(1.0%)製剤があることから製剤の切り替えにあたっては、持続注入器の注入速度、注入量を慎重に設定し、過量投与とならないように気を付けなければならない。