2018年2月23日、抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ錠10mg、同錠20mg)の製造販売が承認された。適応は「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」、用法用量は「成人及び12歳以上の小児には40mgを単回投与、ただし、80kg以上の患者には80mgを単回投与する。また、12歳未満の小児には40mg(体重40kg以上)、20mg(同20kg〜40kg未満)、10mg(同10kg〜20kg未満)をそれぞれ単回投与」となっている。

 インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大するといわれている。現在、インフルエンザウイルス感染症に対する治療薬として、主にヒトA型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害することで感染細胞の表面から増殖されたウイルスが別の細胞へ拡散することを防ぐノイラミニダーゼ阻害薬がある。具体的な薬剤としては、経口製剤のオセルタミビル(タミフル)、吸入製剤のザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、注射製剤のペラミビル(ラピアクタ)が臨床使用されている。

 2014年3月に既存のノイラミニダーゼ阻害薬と異なる作用機序、インフルエンザウイルスの細胞内での遺伝子複製に必須の酵素(RNAポリメラーゼ)を選択的に阻害することでウイルス増殖を防ぐファビピラビル(アビガン)が「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」という適応で承認されている。なお、現時点でファビピラビルは、インフルエンザウイルス対策(パンデミック発生時など)に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品とされている。

 バロキサビル マルボキシルは、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害し,ウイルスのmRNA合成を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制する新しい作用機序を有した薬剤である。また、単回投与で治療が完結するという利便性が高く、良好なアドヒアランスが期待できる薬剤でもある。

 承認時までの成人及び青少年患者を対象とした第3相臨床試験では、プラセボ群と比較して罹患期間の短縮と早期のウイルス減少効果、さらに、小児患者を対象とした第3相臨床試験でも有効性が認められた。また、各種非臨床薬効試験では強い抗ウイルス作用を示し、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスに対する抗ウイルス作用も確認されている。また、2015年10月に「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されたことから、製造販売承認申請を行ってから通常のスケジュールより早く今回の承認に至っている。

 薬剤使用に際しては、国内臨床試験から副作用として下痢(1%以上)、頭痛、ALT(GPT)増加、AST(GOT)増加(各1%未満)が認められていることに注意する必要がある。