2017年12月25日、抗補体(C5)モノクローナル抗体エクリズマブ(商品名ソリリス点滴静注300mg)の適応が拡大された。新しく追加された適応は「全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法または血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」。成人に1回900mgから投与開始し、初回投与後、週1回の間隔で初回投与を含めて合計4回点滴静注。その1週間後(初回投与から4週間後)から1回1200mgを2週に1回の間隔で点滴静注する。なお、本薬は2010年4月に「発作性夜間ヘモグロビン尿症」の適応で承認され、その後、「非典型溶血性尿毒症症候群」(2013年9月)の適応が追加されている。

 難治性の重症筋無力症(MG)は極めてまれな自己免疫性疾患である。MGはアセチルコリン受容体に対する自己抗体ができるものと筋特異的受容体型チロシンキナーゼやLDL受容体関連蛋白4に対する自己抗体ができるものが知られている。抗アセチルコリン受容体抗体陽性MGでは、抗体と補体の働きによって筋肉側の膜が破壊され、アセチルコリン受容体が減少すると考えられている。全身性のMGは、補体系により神経接合部の進行性の炎症とそれに伴う臨床所見が眼筋に限局されず、また眼筋障害の有無にかかわらず広く随意筋(延髄、呼吸器、頭頚部、体幹または末梢)に障害がおよぶことが報告されている。

 全身型重症筋無力症(gMG)を含めた重症筋無力症に対してはプレドニゾロン(プレドニン他)などの経口ステロイド薬を中心にタクロリムス(プログラフ他)、シクロスポリン(ネオーラルのみ)の経口免疫抑制薬、アンベノニウム(マイテラーゼ)などの抗コリンエステラーゼ薬、血漿交換、ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン(ヴェノグロブリンIH) の免疫グロブリン療法が行われている。しかしながら、これらの薬剤やアザチオプリン(イムラン、アザニン)などの国内未承認薬を使用しても重度の身体的障害による困難が持続する症例もあることが大きな問題となっていた。

 エクリズマブは、補体カスケードにおけるヒト補体C5に特異的に結合し、その開裂を用量依存的に抑制することで、終末補体経路(補体複合体活性)を効果的に阻害する。既存のMG療法を適切に受けた難治性のgMG患者を対象とした国際共同臨床試験(REGAIN試験およびその長期追跡試験)にて有効性と安全性が確認された。海外では、gMGに対して欧州(2017年8月)、米国(2017年9月)をはじめとして、2017年11月までに、世界31カ国で承認されている。日本では、2014年12月に希少疾病用医薬品に指定されている。本薬は、作用機序から抗アセチルコリン受容体抗体陽性の患者に投与することとなっている。

 使用に際しては、副作用が65.9%に認められていることに十分注意する必要がある。主なものとして頭痛(14.6%)、下痢、上気道感染(各12.2%)、悪心(9.8%)、鼻咽頭炎(8.9%)などであり、重大なものは髄膜炎菌感染症、infusion reactionが報告されている。中でも髄膜炎菌感染症に関しては、死亡例も認められていることから、原則、投与開始の2週間前までに髄膜炎菌ワクチン(メナクトラ)の接種が必要なことと、万が一、本薬投与により髄膜炎菌感染症が疑われた場合には抗菌薬の投与等の適切な処置が必要であることに留意しておくことが重要である。