2017年12月15日、抗悪性腫瘍薬パルボシクリブ(商品名イブランスカプセル25mg、同カプセル125mg) が発売された。本薬は9月27日に製造販売が承認され、11月22日に薬価収載されていた。適応は「手術不能または再発乳癌」。ただし、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の患者が対象となっている。内分泌療法薬との併用で、1日1回125mgを3週間連続で食後投与し、その後1週間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返すが、患者の状態により適宜減量する。

 乳癌は世界的に女性に多く、臨床現場では外科的手術と薬物療法が行われている。薬物療法としてはアロマターゼ阻害薬レトロゾール(フェマーラ他)などの内分泌療法薬が使用されているほか、細胞障害性抗癌剤(パクリタキセル他)、哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mTOR:mammalian target of rapamycin)を阻害する分子標的薬エベロリムス(アフィニトール)などが用いられている。乳癌はホルモン依存性腫瘍の1つであり、その発生・増殖にエストロゲンが深く関与していることから、内分泌療法は治療の中心的薬剤と位置付けられている。

 乳癌患者のうち約20%は、悪性度が高いヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陽性とされる。HER2は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)ファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼで、細胞の増殖・分化等を調節すると考えられている。このHER2陽性の乳癌では、近年、トラスツズマブ(ハーセプチン)などのヒト化HER2モノクローナル抗体や、チロシンキナーゼ阻害薬のラパチニブ(タイケルブ)などの抗HER2療法が開発され、治療効果が向上してきている。一方で、HER2陰性症例では既存の内分泌療法が中心となっており、さらなる予後改善に向けて新しい薬剤開発が求められていた。

 パルボシクリブはサイクリン依存性キナーゼ(CDK:Cyclin Dependent Kinase)4および6に対して高い選択性を有する世界初のCDK4/6阻害薬である。CDK4および6は細胞周期の調節に重要な役割を果たす細胞周期促進因子であり、これらが関与することで無尽蔵な細胞増殖、すなわち癌化が引き起こされる。CDK4および6は80%以上の腫瘍に認められることが分かっている。

 パルボシクリブはCDK4および6とサイクリンDからなる複合体の活性を阻害することで、網膜芽細胞腫蛋白(Rb)のリン酸化を阻害する。これにより細胞周期の進行が停止し、腫瘍の増殖が抑制されると考えられている。

 内分泌療法治療歴の有無にかかわらず、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発閉経前/後乳癌患者に対する臨床試験(国際共同第3相試験、海外・国内第2相試験)において、パルボシクリブと内分泌療法との併用により高い有効性が確認された。海外においては、進行乳癌の適応で2015年2月の米国をはじめとして、2017年9月までで、欧州連合(EU)など世界70を超える国と地域で承認されている。

 臨床試験では、副作用が94.2〜96.4%に認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用としては、好中球減少症、白血球減少症のほか、脱毛症、悪心、口内炎、疲労(各20%以上)、発疹・下痢・感染症(10%〜20%未満)などがあり、重大な副作用には好中球減少などの骨髄抑制が指摘されている。