2017年11月22日、抗悪性腫瘍薬アベルマブ(商品名バベンチオ点滴静注200mg)が薬価収載と同時に発売された。本薬は9月27日に製造販売が承認されていた。適応は「根治切除不能なメルケル細胞癌」。成人に2週間間隔で、1回10mg/kgを1時間以上かけて点滴静注する。

 メルケル細胞癌は極めてまれな皮膚悪性腫瘍であり、神経内分泌腫瘍に分類されるが、上皮細胞由来として発症するとの報告もある。米国では、メルケル細胞癌罹患患者数は年間10万人あたり0.6人(2006年時点)とされており、日本での患者数は100人に満たないと推定されている。メルケル細胞癌は、非常に進行が早く予後不良であり、手術療法、放射線療法、化学療法などがあるものの有効な治療方法がないのが現状であった。

 腫瘍細胞は、腫瘍微小環境における免疫監視機構から逃れるため、しばしば免疫チェックポイントであるプログラム細胞死リガンド1(Programmed cell Death ligand 1:PD-L1)を過剰発現している。癌細胞はPD-L1を発現し、T細胞表面にある受容体であるプログラム細胞死1(Programmed cell Death 1:PD-1)に特異的に結合することで免疫システムを抑制することが分かっている。

 アベルマブはPD-L1に結合し、PD-1との相互作用を阻害する日本初のヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体である。近年、免疫チェックポイント阻害薬として抗PD-1モノクローナル抗体が注目されているが、アベルマブはPD-1ではなくPD-L1に結合するという違いがある。

 アベルマブは腫瘍細胞上のPD-L1とT細胞上のPD-1 の結合を阻害することで、腫瘍細胞によるT細胞の抑制を解除し、抗腫瘍免疫応答を効果的に増強すると考えられている。アベルマブは主に抗腫瘍CD8+細胞傷害性T 細胞による免疫応答を増強することにより、治療効果をもたらすと推測されている。

 アベルマブと同じ免疫チェックポイント阻害薬としては、PD-1に対するニボルマブ(オプジーボ)が悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫、頭頚部癌、胃癌に、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)が悪性黒色腫、非小細胞肺癌、ホジキンリンパ腫に、さらにT細胞上に存在する受容体CTLA-4(Cytotoxic T Lymphocyte-associated Antigen 4)に対するイピリムマブ(ヤーボイ)が悪性黒色腫に対して適応を有し、現在臨床使用されている。

 遠隔転移のある根治切除不能なメルケル細胞癌患者を対象とした国際共同第2相試験では、アベルマブの有効性が示された。海外においては、2017年9月に米国で承認されている。また、日本では2016年12月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 臨床試験では、副作用が72.6%に認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用として疲労(24.8%)、infusion reaction(14.5%)、下痢(9.4%)、悪心(8.5%)、発疹(6.8%)、無力症・そう痒症(各6.0%)などであり、重大な副作用は間質性肺疾患、肝不全、肝機能障害、肝炎、大腸炎、重度の下痢、甲状腺機能障害、副腎機能障害、1型糖尿病、心筋炎、神経障害、腎障害、筋炎、横紋筋融解症、infusion reactionが報告されている。

 本薬使用においては、がん化学療法に精通している医師の下で行うことや国内での治験症例が限られていることから一定期間、全症例を対象とした使用成績調査を実施することが承認条件となっていることも留意しておく必要がある。