出典:添付文書(2017年9月改訂・第9版)より。下線部が今回の改訂部分。(*画像クリックで拡大します)

 2017年9月27日、肺動脈性肺高血圧症治療薬シルデナフィルクエン酸塩(商品名レバチオ錠20mg)に小児への用法用量が追加され、合わせて添付文書も改訂された(右写真)。また、同時に口腔内崩壊製剤(レバチオODフィルム20mg)とドライシロップ製剤(レバチオ懸濁用ドライシロップ900mg)の製造販売も承認された。

 肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は、肺動脈圧の上昇を認める病態の総称であり、(1)肺動脈性肺高血圧症、(2)左心疾患に伴う肺高血圧症、(3)肺疾患や低酸素血症に伴う肺高血圧症、(4)慢性血栓症や塞栓性疾患に伴う肺高血圧症、(5)その他の肺高血圧症の5つに分類されている。

 PHの中でも肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)は生命予後が極めて悪く、患者の約半数が3年以内に右心不全で死亡する。男女比は1:2.6と女性に多くみられ、発症年齢の分布も男女で異なることが知られている。女性では加齢と共に患者が増加し70歳代がピークになる一方、男性では20歳代が多く、40歳代になるにつれて減り、その後70歳代まで増えるという二峰性を示す。さらに、小児のPAHは成人と同様もしくは成人より急速に病態が進行し、同様に予後は不良であることが多い。

 PAHの発症機序は完全には解明されていないものの、エンドセリン、プロスタサイクリン(PGI2)、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)が強く関連することが分かっている。

 現在、成人PAHの薬物治療としては、プロスタグランジン誘導体のベラプロストナトリウム(ベラサスLA、ケアロードLAなど)、PDE5阻害薬のシルデナフィル(レバチオ)やタダラフィル(アドシルカ)、エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタン(トラクリア)やアンブリセンタン(ヴォリブリス)、マシテンタン(オプスミット)などが使用されている。しかし、小児PAHに対しては、日本では2015年まで承認されている薬剤がなく、成人PAH薬剤の用量を調節して使用している状態だった。2016年になり経口製剤のエンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン、2017年には注射製剤のPG誘導体エポプロステノール(エポプロステノール静注用ACT)において小児への適応および用法用量が認められた。

 シルデナフィルは、1999年に勃起不全治療薬(バイアグラ)として承認され、広く臨床使用されてきた。PDE5は、陰茎海綿体だけでなく、肺動脈平滑筋にも多く存在している。このことからシルデナフィルは肺動脈平滑筋のPDE5の活性を阻害することで、平滑筋弛緩作用を持つサイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制し、結果として肺動脈圧および肺血管抵抗を低下させる。

 シルデナフィルの小児への適応・用法用量については、日本小児循環器学会から早期開発・承認の要望が厚生労働省へ提出されていた。「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」にて高い評価を受けて開発が進み、今回の承認に至った経緯がある。国内の臨床試験および国際共同臨床試験において、小児PAH患者への有効性と安全性が確認された。海外では、2011年欧州で小児への適応が承認されている。

 副作用に関しては、小児PAH患者を対象にした国内外の臨床試験において半数近くに副作用が認められていることに十分注意する。主な副作用には、頭痛、嘔吐、腹痛、鼻出血などが認められている。

 使用に際しては、従来通り、硝酸薬や一酸化窒素供与薬(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビドなど)との併用により降圧効果が増強し、過度の血圧低下を来す危険があることに十分留意する必要がある。