2017年8月30日、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤(商品名ケイセントラ静注用500、同静注用1000)が薬価収載された。本薬は、3月30日に製造販売が承認されていた。適応は「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時、または重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」。投与前のプロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)と体重ごとに投与量が細かく設定されており、決められた投与量を単回静注する。なお、詳細な用量については添付文書を参照されたい。

 血液凝固因子のうち、ビタミンK依存性血液凝固因子(第2、第7、第9および第10因子)と、プロトロンビンからトロンビンを生成してフィブリン形成を促進するXa因子(FXa)、フィブリノゲンからフィブリンへの分解を触媒する酵素トロンビンは、血栓の形成に中心的な役割を果たしている。このことから、血流改善や抗血栓作用を目的とする経口の抗凝固薬として、ビタミンK拮抗薬ワルファリンカリウム(ワーファリン他)、エドキサバン(リクシアナ)などのFXa阻害薬やダビガトラン(プラザキサ)の抗トロンビン薬が広く使用されている。

 クマリン系薬剤に分類されるワルファリンは、1960年代から使用されているエビデンスが豊富な経口抗凝固薬である。ビタミンKの作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制することで、抗凝固効果および抗血栓効果を発揮する。

 しかし、一方でワルファリンに対する感受性には個人差が大きく、出血リスクが高いケースも予測されることから、頻回に血液凝固能のPT-INRモニタリングを行って用量を調節する必要があった。加えて、出血時や手術時、激しい運動など出血が予測される際の止血管理では、ビタミンKの投与やビタミンK拮抗薬の休薬によって対処可能であるものの、これらの効果発現には数時間以上と時間がかかり、重篤な出血や緊急手術などにおける早急な対処が難しいのが現状であった。

 ケイセントラは、4種類のビタミンK依存性血液凝固因子と、ビタミンK依存性の凝固阻止因子のプロテインC、プロテインSの濃縮物からなる乾燥濃縮人プロトロンビン複合体の静注用の血液分画製剤である。ケイセントラは、ビタミンK依存性血液凝固因子を速やかに補充することで、出血リスクの高い、過度に亢進した抗凝固状態を改善することが可能と期待されている。

 海外の臨床試験などで有効性および安全性が確認されていたものの、日本においては日本脳卒中学会から開発・承認の要望が出されていた。「第11回医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」(2012年3月)において高い評価を受けたことで、開発が進み今回の承認につながった。また、ケイセントラは、2016年3月に希少疾病用医薬品に指定されている。海外では、1996年ドイツにて承認されて以降、2017年1月までで、欧州、米国など世界42の国と地域で承認されている。

 海外での第3相臨床試験では、8.5%に副作用が認められていることに注意する。主な副作用としては虚血性脳卒中、PT-INR増加、深部静脈血栓症、四肢静脈血栓症、頭痛(各0.9%)があり、重大な副作用には血栓塞栓症、ショック、アナフィラキシー、播種性血管内凝固(DIC)が報告されている。