2017年7月3日、脊髄性筋委縮症治療薬ヌシネルセンナトリウム(商品名スピンラザ髄注12mg)の製造販売が承認された。適応は「乳児型脊髄性筋委縮症」。投与時の乳児の日齢別に1回9.6mg〜12mgを1〜3分かけて髄腔内投与する。初回投与後、2週、4週および9週に投与し、以降4カ月間隔で投与する。なお、詳細な用量などについては添付文書を参照されたい。

 脊髄性筋委縮症SMA)は、常染色体劣性遺伝性神経筋疾患であり、脊髄の前角細胞の変性による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする。具体的には体幹、四肢の近位部優位の筋力低下、筋萎縮などの運動ニューロンの変性を生じる。

 日本では、推定有病率が10万人あたり1〜2人との報告があり、指定難病となっている。SMAは発症年齢、臨床経過に基づき、I型、II型、III型、IV型に分類されており、I型は乳児期、II型は乳児期から幼児期、III型は幼児期から小児期、IV型は成人期に発症することが多い。特に、乳児期に発症するI型はSMA患者の約半数を占めており、大部分の症例で運動ニューロン維持に不可欠な運動神経細胞生存(SMN)蛋白質を産生するSMN1遺伝子の欠失または変異が認められている。この遺伝子の欠失や変異によってSMN蛋白質の産生が減少すると、脊髄内の運動ニューロンが徐々に脱落し、筋萎縮が生じる。

 ほぼすべてのSMA患者では、SMN1遺伝子の重複遺伝子であるSMN2遺伝子を少なくとも1つは有していることが解明されている。SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と似た構造をしていてSMN蛋白質を生産するが、その生産量はSMN1遺伝子と比較して非常に少ない。ただし、このSMN2遺伝子の数には患者によってばらつきがあり、SMN2遺伝子を複数持っているほど、比較的軽症になることが分かっている。

 ヌシネルセンは合成ヌクレオチドで、日本初となるアンチセンス核酸医薬品である。SMN1遺伝子の重複遺伝子であるSMN2遺伝子のmRNA前駆体に結合することで、SMN蛋白質の発現を増加させ、運動機能の改善などをもたらす。

 従来、SMAに対してアデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)製剤(アデホス-Lコーワ、トリノシン他)が適応を有しているものの、有効性などのエビデンスは少なく、呼吸療法、栄養補助、リハビリテーションなどの対症療法が中心的な治療となっていた。

 日本を含む多施設共同比較対照試験(ENDEAR試験)にて、本薬の有効性と忍容可能な安全性が確認された。海外では2017年5月までで、米国とEUにおいて承認されている。 

 第3相シャム(擬似的)処置対照二重盲検試験において、副作用が11.3%に認められていることに十分注意する。主な副作用として発熱(2.5%)、頻脈、貧血母斑、蜂巣炎、処置後腫脹、眼振、血管炎、体温低下、体温上昇(各1.3%)が報告されている。

 薬剤投与にあたっては、事前に遺伝子検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1つ以上あることが確認された患者に投与しなければならない。また、薬剤による副作用等の有害事象の発現および重症化の防止の観点から薬剤投与開始前および投与期間中は定期的に臨床検査(血算[血小板数]および凝固能、腎機能、肝機能)を行う必要があることにも留意しておかなければならない。