2017年6月19日、癌疼痛治療薬ヒドロモルフォン塩酸塩の即放製剤(商品名ナルラピド錠1mg、同錠2mg、同錠4mg)、徐放製剤(ナルサス錠2mg、同錠6mg、同錠12mg、同錠24mg)が発売された。本薬は、3月30日に製造販売が承認され、5月24日薬価収載されていた。適応は「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」。4〜24mgを、ナルラピドの場合は1日4〜6回に分割して、ナルサスの場合は1日1回経口投与する。

 各種癌疾患における疼痛は、神経学的な分類として侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に大別され、さらに、侵害受容性疼痛は、皮膚や骨などの体性組織への機械的刺激が原因の体性痛、食道や胃腸などの管腔臓器の炎症・閉塞による内臓痛に細分化されている。

 これらの癌疼痛治療においては、WHOガイドラインである「WHO方式癌疼痛治療」に基づいて非オピオイド鎮痛薬やオピオイド鎮痛薬などが臨床現場で汎用されているが、中でも、軽度から中等度以上の強さの疼痛ではオピオイド鎮痛薬が治療の主流となっている。

 ヒドロモルフォンは、WHOガイドラインに加え、欧州緩和ケア学会(EAPC)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)、全米総合癌情報ネットワーク(NCCN)の各ガイドラインでも、既存の強オピオイド鎮痛薬であるモルヒネ(アンペック他)、オキシコドン(オキシコンチン他)と同様に中等度から高度の癌疼痛治療に用いる標準薬として位置付けられている。また、継続治療においては効果の減弱や副作用などを避けるため、他のオピオイド鎮痛薬に変更(オピオイドスイッチング)する場合が多く、治療選択肢を広げる意味でもヒドロモルフォンは海外で欠かせない薬剤となっている。

 国内では未承認だったため、日本緩和医療学会および日本緩和医療薬学会から早期開発・承認の要望書が提出されていた。その後「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で高く評価されたことで、開発が進み、今回の承認につながった。また、厚労省のガイダンスで「定時投与では徐放製剤を使用し、用量調節や突出痛への対処に同一成分の即放製剤を使用することが適している」と明記されていることから、即放製剤と徐放製剤が開発された。

 中等度から高度の日本人癌疼痛患者に対する国内臨床試験において有効性が確認されており、さらに安全性についても既存のオピオイド鎮痛薬を上回る懸念は認められなかった。海外では、2016年3月までで、米国や英国など世界45の国および地域で承認されている。

 国内臨床試験において何らかの副作用が、ナルラピドでは49.8%に、ナルサスでは61.2%に認められていることに注意する。ナルラピドの主な副作用には傾眠(18.4%)、悪心(15.0%)、便秘(14.5%)、嘔吐(14.0%)などがあり、ナルサスの主な副作用には悪心(29.5%)、嘔吐(27.3%)、傾眠(20.1%)、便秘(10.8%)などがある。重大な副作用としてはどちらにおいても依存性、呼吸抑制、意識障害、イレウス(麻痺性イレウスを含む)や、炎症性腸疾患患者における中毒性巨大結腸などが報告されている。