2017年2月22日、多発性硬化症治療薬フマル酸ジメチル(商品名テクフィデラカプセル120mg、同カプセル240mg)が発売された。本薬は、2016年12月19日に製造販売が承認され、2017年2月15日に薬価収載されている。適応は「多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制」。1回120mgを1日2回から投与し、1週間後に1回240mgを1日2回に増量する。いずれの場合も朝・夕食後に投与する。

 主な副作用である潮紅、消化器系副作用などが出現した場合には、患者の状態を慎重に観察しながら1カ月程度の期間は1回120mg1日2回投与に減量することもできる。しかし、1回240mg1日2回投与への再増量に対して忍容性が認められない場合は、本剤の投与を中止することに注意する。投与によりリンパ球数が減少し、6カ月以上継続した場合に進行性多巣性白質脳症(PML)の発症が報告されているため、投与開始前および投与中は少なくとも3カ月に1回、リンパ球を含む全血球数の測定を実施することになっている。


 多発性硬化症MS)は、中枢神経系の炎症性脱髄性障害を主徴とし、若年成人に多く発生する自己免疫疾患である。一般的な症状には、視覚および眼球運動異常、感覚異常、筋力低下、痙縮、排尿不全、認知症機能障害などがある。

 MSにはいくつかの病型分類が存在する。急速あるいは緩徐に神経症候が出現し、再発と寛解を繰り返すものの病状の持続進行はない再発寛解型、再発寛解型で始まった後に、長期にわたり持続的進行を示す二次性進行型、初期から持続進行し、時に一過性の軽度改善や急性増悪が重なる一次性進行型などがある。日本では特定疾患に指定されており、国内の患者数は1万2000人程度と推定されている。

 治療法としては急性期にステロイド薬などが使用され、対症療法としては痙縮にバクロフェン(リオレサール、ギャバロン)、排尿障害には抗コリン薬などが使用されている。さらに、MSの再発予防や身体的障害の進行予防には、注射製剤インターフェロンβ-1a(アボネックス)、インターフェロンβ-1b(ベタフェロン)、内服製剤フィンゴリモド塩酸塩(イムセラ、ジレニア)、注射製剤ナタリズマブ(タイサブリ)、グラチラマー酢酸塩(コパキソン)が臨床使用されている。*は、再発予防のみの適応

 テクフィデラは、新しい作用機序を有する経口の病態修飾薬(DMD)で、フマル酸エステル製剤であるフマル酸ジメチル(DMF)を有効成分としている。DMFおよびその活性代謝物は、末梢および中枢神経系(CNS)の細胞・組織において、酸化、炎症、生体異物ストレスを軽減する重要な細胞防御機構(Nrf2)経路の活性化を介して抗炎症および神経保護作用を発揮すると考えられている。海外においては2016年12月までで、米国、欧州連合(EU)など世界54カ国で承認されている。日本においては、海外で承認の根拠となった再発寛解型多発性硬化症(RRMS)患者における臨床第2相および第3相試験の先行データと、日本人を含むRRMS患者での国際共同試験において有効性と安全性が確認された。

 国内の臨床試験では、副作用が55.9%に認められていることに十分注意する。主な副作用には潮紅(20.7%)、悪心(9.5%)、腹痛・悪心(各6.3%)などがあり、重大な副作用としてはリンパ球減少、白血球減少、進行性多巣性白質脳症(PML)、感染症、急性腎不全、肝機能障害、アナフィラキシーが報告されている。