2017年2月15日、二次性副甲状腺機能亢進症治療薬エテルカルセチド塩酸塩(商品名:パーサビブ静注透析用2.5mg、同静注透析用5mg、同静注透析用10mg)が薬価収載と同時に発売された。本薬は、2016年12月19日に製造販売が承認されている。適応は「血液透析下における二次性副甲状腺機能亢進症。1回5mgを開始用量とし、成人に週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。それ以降は、患者の副甲状腺ホルモンおよび血清カルシウム濃度の十分な観察の下、1回2.5〜15mgの範囲で適宜用量を調整する。

 二次性副甲状腺機能亢進症SHPT)とは、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌を引き起こす、頻度の高い慢性腎不全CKD)の合併症である。CKDの進行に伴ってリンの排泄が低下すると、ビタミンD活性化障害に伴って血中カルシウム濃度が低下する。血中カルシウム濃度を高めるために副甲状腺ホルモンの分泌が刺激されるが、やがて副甲状腺ホルモンの分泌が過剰になってしまう。骨吸収が促進されるため骨痛や関節痛を引き起こし、骨から溶け出したカルシウムとリンが全身の心血管系に蓄積して石灰化することで、動脈硬化などの心血管系障害の発症リスクが高まることが知られている。

 日本透析医学会の「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン(2012年)」では、透析患者における血清リン、カルシウムおよびPTH濃度の管理目標値が示されており、血清intact PTH(iPTH)濃度の管理目標値は60〜240pg/mLとされている。SHPT患者におけるPTH管理を目的とした薬物治療としては、カルシトリオール(ロカルトロール他)などの活性型ビタミンD製剤、カルシウム受容体(CaSR)作動薬のシナカルセト塩酸塩(レグパラ)が患者の状態に合わせて用いられている。具体的には、PTH値が高くリンまたはカルシウム値が正常または高値の場合はCaSR作動薬、リンまたはカルシウム値が正常または低値である場合は活性型ビタミンD製剤の投与が推奨される。

 エテルカルセチドは、7つのD-アミノ酸ペプチドにL-Cysがジスルフィド結合した合成ペプチドで、既存のシナカルセトと同じCaSR作動薬である。副甲状腺細胞表面のカルシウム受容体に直接作用することで、血清カルシウム値を上昇させずにPTHの分泌を抑制するとともに、血清リン値をも低下させる。シナカルセトは経口製剤(錠剤)であるが、エテルカルセチドは透析終了時に透析回路より投与される、世界初の注射製剤である。注射製剤のエテルカルセチドは、一般的に水分摂取が制限され、かつリン吸着剤などの経口製剤の併用が多い透析患者には、コンプライアンス向上や患者の服薬負担の軽減などが期待されている。

 国内のプラセボ対照二重盲検比較試験および長期投与(53週)試験でPTHの分泌を抑制し、9割以上の患者が365日目に血清iPTH値の目標値に達したことが確認された。さらにエテルカルセチドは、チトクロームP450(CYP)による代謝を受けず、CYPの阻害や誘導をしないこと、さらにはトランスポーターに対する基質性および阻害作用を示さないことから、薬物相互作用を生じにくいことも確認されている。

 国内の臨床試験から副作用が26.4%に認められていることに十分注意する。主な副作用は血中カルシウム減少(14.7%)、嘔吐(2.1%)、低カルシウム血症・味覚異常・下痢(各1.0%)などであり、重大な副作用は低カルシウム血症、血中カルシウム減少、心不全の増悪、QT延長が報告されている。