2016年11月18日、抗悪性腫瘍薬エロツズマブ(商品名エムプリシティ点滴静注用300mg、同点滴静注用400mg)が薬価収載と同時に発売された。適応は「再発または難治性の多発性骨髄腫」。1日1回、10mg/kgを点滴静注するが、本剤は単独投与での有効性と安全性が確立していないため、レナリドミドおよびデキサメタゾンと併用することに注意する。28日間を1サイクルとして、最初の2サイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、3サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)投与する。

 多発性骨髄腫MM)は、骨髄中の形質細胞が癌化し、再発を繰り返す難治性の造血器腫瘍である。MMでは貧血、腎障害、骨痛および骨折、血液中のCa値上昇などの症状が発現する。日本における推定患者数は約1万8000人とされており、MM治療としては、プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブ(ベルケイド)、カルフィルゾミブ(カイプロリス)や、免疫調節薬サリドマイド(サレド)、レナリドミド(レブラミド)、ポマリドミド(ポマリスト)、さらにヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬パノビノスタット(ファリーダック)を用いた複数のレジメンが従来から使用されている。

 エロツズマブは、Signaling Lymphocyte Activation Molecule Family member 7(SLAMF7)という蛋白質に結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。SLAMF7は骨髄腫細胞とナチュラルキラー(NK) 細胞の表面に多く発現しており、ここにエロツズマブがそれぞれ結合することで二重の腫瘍増殖抑制効果を発揮すると考えられている。骨髄腫細胞上のSLAMF7に結合すればFc受容体を介したNK細胞との相互作用により抗体依存性細胞傷害を誘導し、NK細胞上のSLAMF7と結合すればNK細胞を直接活性化すると考えられている。また、動物試験においてレナリドミドとの併用により相乗的な抗腫瘍効果も確認されている。

 再発または難治性のMM患者を対象とした国際共同第3相試験では、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾン療法と比較して奏効率の有意な改善と無増悪生存期の有意な延長が認められている。海外では、2015年11月に米国で承認されて以降、2016年10月までで、米国、EUを含む世界7つの国および地域で承認されている。また、日本では、2015年11月に希少疾病用医薬品として指定されている。

 臨床試験において、臨床検査値異常を含む副作用が92.1%に認められていることに十分注意する。主な副作用として疲労(28.9%)、好中球減少(27.0%)、下痢(18.6%)、血小板減少(17.6%)、筋痙縮(16.4%)不眠症(16.0%)、貧血(15.1%)などがあり、重大な副作用にはInfusion reaction、感染症、リンパ球減少、間質性肺疾患が報告されている。