2016年11月18日、抗血小板薬チカグレロル(商品名ブリリンタ錠60mg、同錠90mg)が薬価収載された。本薬は、9月28日に製造販売が承認されている。適応および用法用量は、規格によって以下の2種類に分けられる。

ブリリンタ錠60mg
 リスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発症リスクが特に高い場合。1回60mg、1日2回投与する。(※65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、または末期でない慢性の腎機能障害)

ブリリンタ錠90mg
 経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)。ただしアスピリンを含む抗血小板薬2剤併用療法が適切である場合で、アスピリンと併用する他の抗血小板薬の投与が困難な場合に限る。初回用量として180mgを、2回目以降は維持用量として90mgを1日2回投与する。

 なお、いずれの場合にも必ずアスピリンと併用する(維持用量として81〜100mg/日)。使用に際しては、規格により適応が異なること、90mg錠では併用療法が副作用などで困難な場合にのみ考慮することに十分注意しておかなければならない。また、イトラコナゾール(イトリゾール他)などの強いCYP3A阻害薬、リファンピシン(リファジン他)などの強いCYP3A誘導薬との併用は、チカグレロルの血中濃度に影響を及ぼすので禁忌となっている。

 PCI施行後の再梗塞予防において、国内外のガイドラインでは抗血小板療法が推奨されているが、単剤のみの治療では心血管イベントを更に増加させることが報告されている。このことから、近年ではクロピドグレル(プラビックス)などのチエノピリジン系抗血小板薬とアスピリンを投与する2剤抗血小板療法(DAPT)が行われている。

 チカグレロルは、シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類される新規化合物であり、チエノピリジン系薬剤と同様に血小板のアデノシン二リン酸(ADP)受容体(P2Y12受容体)に対して選択的、直接的な阻害作用を有し、ADPによる血小板凝集を抑制する。

 チカグレロルによるP2Y12受容体阻害は、既存のチエノピリジン系P2Y12受容体阻害薬とは異なり可逆的であるため、投与終了後には速やかに作用が消失する特徴がある。また、肝臓での代謝活性化を必要とせずに作用が発現し、投与後早期に血小板凝集阻害作用が得られる。血小板凝集抑制作用による出血等を防ぐため、既存の薬剤では手術前に10〜14日以上の休薬が必要であったが、チカグレロルでは血小板凝集抑制作用の消失が早いことから手術前5日以上の休薬となっている。

 3つの臨床試験[急性冠症候群患者を対象とした国際共同第3相臨床試験(PLATO試験)、日本を含むアジア人を対象としたアジア共同第3相臨床試験、心筋梗塞の既往を有する患者を対象とした国際共同第3相臨床試験(PEGASUS試験)]において、アスピリンとの併用療法による有効性と安全性が確認されている。海外では、2010年12月の欧州(英国)、2011年7月の米国をはじめとして、2016年9月までで世界100の国および地域で承認されている。

 国内外の臨床試験では、副作用として出血傾向(皮下出血、内出血の増加など)、呼吸困難、高尿酸血症などが認められており、重大な副作用は出血(頭蓋内出血、消化器系出血など)、アナフィラキシー、血管浮腫が報告されている。