2016年8月26日、抗悪性腫瘍薬ベンダムスチン塩酸塩(商品名トレアキシン点滴静注用100mg)の適応が拡大された。追加された適応症は「慢性リンパ性白血病」。同薬は、2010年12月から「再発または難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫」および「マントル細胞リンパ腫」の適応で臨床使用されている。慢性リンパ性白血病における用法用量として、1日1回100mg/m2を1時間かけて2日間連続で点滴静注し、26日休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。

 慢性リンパ性白血病(CLL)は、日本ではまれなB細胞性の腫瘍で、単一な小型円形から軽度の異型を持ったリンパ球(CLL細胞)が血液中で過度に増加する。CLL細胞の表面にはCD5やCD23などの表面抗原が認められている。日本の患者総数は2000人程度で新規の罹患率は10万人に0.3人前後と希少な疾患であるが、欧米では全白血病の約30%を占める最も発症頻度が高い白血病で、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患といわれている。

 CLLの治療は分子標的薬の登場で、近年飛躍的に向上している。CLLに対する日本での第一選択薬は、フルダラビン(フルダラ)単独療法、フルダラビンを中心とした多剤併用療法、シクロホスファミド(エンドキサン)と他の薬剤の併用療法である。再発または難治性のCLLに対しては、CD20を標的とする分子標的薬オファツムマブ(アーゼラ)、CD52を標的とするアレムツズマブ(マブキャンパス)、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬イブルチニブ(イムブルビカ)が臨床使用されている。

 しかしCLLは再発が多い難治性の血液腫瘍である一方で、まだ治療選択肢が十分ではないことが問題となっている。

 ベンダムスチンは、ナイトロジェンマスタード化学構造、プリンアナログ様化学構造を併せ持つようにドラッグデザインされた新規DNA作用薬である。癌抑制遺伝子であるp53遺伝子に対し依存的および非依存的に腫瘍細胞のアポトーシス引き起こし、その他にも有糸分裂期チェックポイントの抑制を介して分裂期破壊などを誘導するといわれている。またベンダムスチンには、既存のアルキル化剤投与によって起こってくるDNA修復の影響を受けないことから、交差耐性が少ないという特徴がある。

 ベンダムスチンは欧米などにて、未治療でのCLLに対し従来より適応を有していたため、国内の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において必要性の高い医薬品として評価されていた。2010年12月に厚生労働省から開発要請がなされ、2012年6月に希少疾病用医薬品に指定された。その後、未治療および既治療のCLL患者を対象とした国内第2相試験、クロラムブシル(国内未承認薬)を対照薬とした未治療CLL患者対象の海外第3相臨床試験にて有効性(奏効率、無増悪生存期間中央値)が確認された。これら試験の結果を踏まえて承認申請が行われ、今回の適応拡大に至った。

 薬剤使用に際しては、ほぼ全症例に臨床検査値異常を含む副作用が認められていることに十分注意する必要がある。また、重大な副作用としては、骨髄抑制、感染症、間質性肺疾患、腫瘍崩壊症候群、重篤な皮膚症状、ショック、アナフィラキシーが報告されている。

 また、2016年9月28日には個々の患者に応じて適切な投与量設定を可能にするため、ベンダムスチンの低用量製剤(トレアキシン点滴静注用25mg)も製造販売が承認された。