2016年8月26日、抗悪性腫瘍薬エベロリムス(商品名アフィニトール錠2.5mg同錠5mg)の適応症のうち、「膵神経内分泌腫瘍」が「神経内分泌腫瘍」へと拡大された。本薬は、他にも「根治切除不能または転移性の腎細胞癌」(2010年1月)、「結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫または上衣下巨細胞性星細胞腫」(2012年11月)、「手術不能または再発乳癌」(2014年3月)に適応を有している。

 神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は、神経内分泌細胞由来の腫瘍の総称で、その多くは膵臓と消化管、肺に発生する。以前から小腸NETに対してカルチノイドという名称が使用されてきており、長い間NETは概念が不明瞭なカルチノイドと呼ばれていた。しかし、NETの臨床病理学的研究が進むにつれてWHO病理組織学的分類(2000年改訂)では、分化度を基軸として分類が作成され、過剰なホルモン分泌(ガストリノーマ、インスリノーマ、グルカゴノーマなど)により様々な症状が現れる「機能性」と、ホルモン分泌による症状がない「非機能性」に大別している。国内のNET患者数は1万5000〜1万7000人と推定され、人口10万人あたり5.25人の割合で発症しているが、近年増加傾向を示している。

 従来からNETに対しては、外科的切除による全摘が標準的な治療となっているが、切除不能例では、腫瘍増殖を抑えて生命予後を改善させる薬物治療が用いられている。従来の化学療法薬では保険適応外がほとんどであったが、膵NETには分子標的薬の2011年エベロリムス、2012年スニチニブ(スーテント)が承認になり、2011年消化管NETにはソマトスタチンアナログのオクトレオチド(サンドスタチン)、2014年ニトロソウレア系ストレプトゾシン(ザノサー)が使用されていた。

 エベロリムスは、細胞の生存・成長・増殖を調節するmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の活性を阻害し、細胞周期の進行および血管新生を抑制することにより、腫瘍細胞の増殖を抑制するmTOR阻害薬である。mTOR阻害薬には、経口のエベロリムス以外にも注射製剤のテムシロリムス(トーリセル)が腎細胞癌の適応で2010年9月より臨床使用されている。

 消化管・肺神経内分泌腫瘍患者を対象とした、日本人を含む第3相国際共同臨床試験(RADIANT-4試験)においてエベロリムスの有用性が示され、今回の適応拡大につながった。従来の膵NETのみならず、消化管または肺原発のNETにも使用できるようになった。海外では2016年5月までで、世界120カ国以上にて承認されている。

 消化管・肺神経内分泌腫瘍患者を対象とした第3相国際共同臨床試験では、95.5%に副作用が認められている。主な副作用は口腔内潰瘍を含む口内炎(62.9%)、下痢(31.2%)、疲労(30.7%)などであり、重大な副作用は警告欄にも注意喚起が行われている間質性肺疾患(15.1%)などが報告されている。薬剤使用に際しては、事前に他の副作用等を含めた詳細な情報に関して添付文書を参照されたい。