2016年8月26日、抗悪性腫瘍薬ニボルマブ(商品名オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg)の適応が拡大された。追加された適応は「根治切除不能または転移性の腎細胞癌」で、成人に1回3mg/kgを2週間間隔で点滴静注する。ニボルマブは、2014年7月に「根治切除不能な悪性黒色腫」で承認されて以来、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応が拡大し臨床使用されていた。

 腎細胞癌は、成人の腎実質に発生する悪性腫瘍で、腎悪性腫瘍の中で患者数が最も多い。高齢化や検査機器の検知能力向上などを理由に発生頻度は年々増加しており、世界で毎年11万人以上が死亡している。近年、日本では転移性腎細胞癌に対して、エベロリムス(アフィニトール)やテムシロリムス(トーリセル)などのmTOR阻害剤、スニチニブ(スーテント)、ソラフェニブ(ネクサバール)、パゾパニブ(ヴォトリエント)、アキシチニブ(インライタ)などの分子標的薬(小分子化合物)が汎用されている。

 分子標的薬は癌細胞のみを標的とする薬剤で、小分子化合物とモノクローナル抗体の2種類が存在する。小分子化合物の一般名には「nib(ニブ)」と付けられ、モノクローナル抗体の場合では「mab(マブ)」と付けられる。

 ニボルマブは、世界初となるヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の分子標的薬である。PD-1は、活性化したリンパ球(T細胞、B細胞およびナチュラルキラーT細胞)や骨髄系細胞に発現するCD28ファミリー(T 細胞の活性化を補助的に正と負に制御する分子群)に属する受容体である。このPD-1はリンパ球の活性化を抑制しており、癌細胞はPD-1と結合するリガンドを発現して免疫寛容状態をつくり出し、免疫反応から逃れていると考えられている。ニボルマブはPD-1を阻害し、癌抗原特異的なT細胞の活性化および癌細胞に対する細胞傷害活性を増強することで、持続的な抗腫瘍効果を示す。

 既存の抗悪性腫瘍薬(血管新生阻害薬など)を含む化学療法歴を有する「根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者(日本人患者を含む)」を対象とした国際共同第3相試験では、エベロリムスを対照として、ニボルマブの有意な全生存期間の延長などの有効性と安全性が確認された。また、米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインでは、スニチニブなど血管新生阻害薬の化学療法歴を有する「根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者」に対する治療選択肢の1つとして推奨されている。2016年8月までで、米国、EU、アジア各国を含む50カ国以上で承認されている。

 国際共同第3相試験では、78.6%に臨床検査値異常を含む副作用が報告されている。主な副作用として疲労(33.0%)、悪心・そう痒症(各14.0%)、下痢(12.3%)、食欲減退(11.8%)、発疹(10.1%)などがあり、重大な副作用として間質性肺疾患、重症筋無力症、筋炎、肝機能障害、肝炎などが報告されている。薬剤使用に際しては、事前に最新の添付文書で安全性等を確認するとともに、製薬会社が提供する適正使用ガイド等を熟読しておくことが重要である。

 なお、適応拡大が承認されるまでの症例が極めて少ないことから、一定期間、全症例を対象に使用成績調査を実施する必要があることにも留意しなければならない。