2016年7月4日、高コレステロール血症治療薬アリロクマブ(商品名プラルエント皮下注75mgシリンジ、同皮下注75mgペン、同皮下注150mgシリンジ、同皮下注150mgペン)の製造販売が承認された。適応は「家族性高コレステロール血症高コレステロール血症」で、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)で効果不十分な場合に限る。成人には2週間に1回75mgを皮下注し、効果不十分な場合は1回150mgに増量が可能。アフェレーシスを施行する場合には、アフェレーシスの後にアリロクマブを投与する。

 高コレステロール血症(HC)、特に高LDLコレステロール血症(高LDL-C血症)は血中のコレステロールや脂質量が異常増加を示す代表的な脂質異常症である。高LDL-C血症は、冠動脈疾患および脳梗塞の確立された危険因子であり、特に心血管イベントの発現リスクが高い患者には、より厳格なLDL-Cコントロールが不可欠となっている。

 家族性高コレステロール血症(FH) は遺伝子の突然変異で生じる遺伝性疾患であり、低年齢時よりLDL-C値が高くなることが分かっている。またFH患者は、ホモ接合体(HoFH)とヘテロ接合体(HeFH)のタイプに分かれており、コレステロール調節遺伝子の片方だけが変異しているHeFHの発生頻度は、調節遺伝子が両方ともに変異しているHoFHに比較して罹患患者が多い。日本では約500人に1人の割合でHeFHを発症している。

 現在、LDL-C値低下を目的としたHCの治療には、内服の薬物治療(スタチンの単剤または作用機序が異なる他の薬剤との併用療法)が基本となっており、多くの患者で有意なLDL-C低下が認められている。しかし、虚血性心疾患の既往歴を有する患者で、HCやFHなどの脂質異常を誘因とした心血管イベントの発現リスクが高い場合、既存の薬物治療ではLDL-C値の低下が不十分となる症例も少なくない。

 アリロクマブは、2016年4月に発売されたエボロクマブ(商品名レパーサ)に次ぐLDL受容体分解促進タンパク質PCSK9(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)をターゲットとしたヒト型モノクローナル抗体(IgG1)の薬剤である。アリロクマブはPCSK9のLDL受容体への結合を阻害することで、LDL受容体の分解を抑制し、血中LDL-Cの肝細胞内への取り込みを促進する。

 スタチンを処方してもLDL-C値が管理目標値まで低下せず、かつ心血管イベントの発現リスクが高いHC患者(HeFHを含む)を対象とした国内第3相臨床試験では、スタチンを含む脂質低下療法にアリロクマブを追加投与することでLDL-C値が顕著に低下し、さらに長期(52週)にわたる安定したLDL-C低下効果が得られることが示された。2015年7月に米国で、9月に欧州連合(EU)で承認されて以降、2016年6月までで世界30カ国/地域以上にて承認されている。

 国内第2相および第3相臨床試験では、副作用が17.1%認められている。主な副作用は注射部位反応(11.4%)などであり、重大なものとして過敏症などの重篤なアレルギー反応が海外の臨床試験で報告されている。

 なおアリロクマブ使用の際は、エボロクマブと同様に既存のスタチンと併用する必要があることに注意しなければならない。またエボロクマブと異なり、現時点ではアリロクマブのHoFHに対する有効性および安全性は確立していないとされる。