2016年7月8日、抗ウイルス化学療法剤であるエルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド配合錠(商品名ゲンボイヤ)が発売された。本薬は6月17日に製造承認、6月29日に薬価収載されている。適応は「HIV-1感染症」で、成人および体重35kg以上で12歳以上の小児に1日1回、食後に1錠を経口投与する。

 2016年6月時点で、日本におけるHIV治療薬は7種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、4種類の非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、8種類のプロテアーゼ阻害薬(PI)、2種類のインテグラーゼ阻害薬(INSTI)、1種類の侵入阻害薬(CCR5受容体拮抗)が使用されている。

 国内外のHIV治療ガイドラインでは抗ウイルス薬を3〜4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が中心の治療法になっており、日本でも作用機序が異なる2〜3薬剤を合わせた配合製剤が多く使用されている。このARTにより、HIV感染者の生命予後は著しく改善された。

 しかし体内からHIVを完全に排除することは事実上不可能であり、感染者は血漿中HIVのRNA量を検出限界以下に抑制し続けるため、生涯治療を継続しなければならないのが現状である。患者の服薬アドヒアランスを高く維持するために、今以上に服薬錠数の少ない薬剤の開発が望まれていた。

 そのため2013年、INSTIのエルビテグラビル、薬物動態学的増強因子(ブースター)のコビシスタット、NRTIのエムトリシタビンおよびテノホビルを1錠中に配合した薬剤(商品名スタリビルド)が使用されるようになった。スタリビルドはCYP3Aで代謝されるエルビテグラビルを薬物動態的に増強させた薬剤である。CYP3Aの阻害薬であるコビシスタットを加えることでエルビテグラビルが代謝されるのを防ぎ、1日1回投与で抗ウイルス作用を発揮する血中濃度を維持できる。

 ゲンボイヤは、スタリビルドに含まれるテノホビルのプロドラッグであるテノホビル ジソプロキシル(TDF)を、テノホビルアラフェナミド(TAF)に置き換えた配合剤である。臨床試験では、TAFがTDFに比べて1/10の投与量で同程度の抗ウイルス効果を示し、さらにTDFで懸念されていた腎臓や骨への影響が軽減されることが示された。

 治療経験がない日本人を含むHIV-1感染症患者を対象とした、海外における臨床試験では何らかの副作用が42.4%に認められている(投与後96週時)。主な副作用は悪心(10.4%)、下痢(7.3%)、頭痛(6.1%)などであり、重大な副作用は腎不全または重度の腎機能障害、乳酸アシドーシスが報告されている。