2016年6月17日、抗マラリア薬プリマキンリン酸塩(商品名プリマキン錠15mg)が発売された。本薬は、3月28日に製造販売が承認、5月25日に薬価収載されている。適応は「三日熱マラリアおよび卵形マラリア」で、成人に1日1回30mgを14日間食後投与する。

 人に感染するマラリアには熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアおよびサルマラリアの5種類が知られている。マラリアは蚊によって媒介される病気で、吸血の際に病原原虫が蚊の唾液と共に人体内へ侵入する。原虫はまず肝細胞内で増殖し、その後血液中に移行して赤血球内で無性生殖を繰り返す。再び蚊に吸血されると蚊の腸管内に移り、有性生殖を始める。5種類のマラリアのうち三日熱マラリアと卵形マラリアの原虫は、一部が肝細胞内で休眠型(ヒプノゾイト)となり、1カ月〜数カ月、時には1年程度の期間を経て再発する。

 三日熱マラリアおよび卵形マラリアの急性期の治療には、キニーネ塩酸塩水和物(商品名塩酸キニーネ)、メフロキン塩酸塩(メファキン)、アトバコン・プログアニル塩酸塩(マラロン)が使用されているが、これらの薬剤は肝臓の休眠型原虫を殺滅できず、再発を防ぐことが難しかった。

 今回発売されたプリマキンは8‐アミノキノリン化合物で、休眠しているマラリア原虫のミトコンドリア電子伝達系を障害し、また活性酸素によって酸化的な損傷を与え休眠原虫を殺滅すると推察されている。国内外の診療ガイドラインは三日熱マラリアと卵形マラリアの再発を防ぐ標準治療薬として位置付けている。

 プリマキンは1952年の米国での承認以降、60年以上海外で製造販売されていたが、日本では未承認のため発売されていなかった。そのため厚生労働省の「熱帯病治療薬研究班」に所属する医療機関では、プリマキンを個人輸入し、海外と同様の用法用量で使用していた。

 こうした背景から、日本熱帯医学会および日本感染症教育研究会が開発要請を出し、2012年の「医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」にて評価されたことで、開発、承認に至った。

 プリマキンの国内外の臨床試験論文や臨床研究論文から、発疹、掻痒症、悪心、嘔吐、胃部不快感、腹痛、浮動性めまいといった副作用が報告されており、重大なものは溶血性貧血、白血球減少、メトヘモグロビン血症が認められている。

 使用の際は対象患者を適切に選定し、使用状況を確認することが重要になる。特にグルコース‐6‐リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損患者には重篤な溶血性貧血が認められているため、事前に家族歴を含めて確認する。またプリマキンは肝細胞内に存在するマラリア原虫の休眠体を殺滅する根治治療薬であり、赤血球中の原虫に対しては他の抗マラリア薬を使用しなければならない。

 ちなみにプリマキンの薬価収載日と同じ5月25日には、既存の抗マラリア薬アトバコン・プログアニル塩酸塩の新用法、新用量が認められた新剤形(マラロン小児用配合錠)も薬価収載されている。