2016年6月1日、抗悪性腫瘍薬塩化ラジウム223Ra(商品名ゾーフィゴ静注)が発売された。本薬は3月28日に製造販売が承認され、5月25日に薬価収載されている。「骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌」を適応とし、1回55kBq/kgを4週間間隔で最大6回まで、緩徐に静注する。

 前立腺癌は、男性ホルモンであるアンドロゲンにより増殖する癌であり、精巣を摘除する外科手術(外科的去勢術)や、アンドロゲンの作用を抑制するホルモン療法(内科的去勢術)が行われる。しかし、これらの治療を施しても進行または再発する場合が多く、「去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)」と呼んでいる。CRPCはホルモン非依存性を強めた癌で、アンドロゲンが枯渇しても、副腎由来のわずかなアンドロゲンで増殖を続ける。やがてはアンドロゲンを完全に遮断しても進行するほどに強力な去勢抵抗性を獲得するケースもある。

 CRPCの治療には、もともと微小管阻害作用があるタキサン系抗癌薬のドセタキセル(商品名タキソテール他)しか選択肢がなかったが、近年新薬の開発が進み、タキサン系抗癌薬のカバジタキセル(ジェブタナ)や抗アンドロゲン薬のエンザルタミド(イクスタンジ)、アビラテロン(ザイティガ)が登場してきた。

 ゾーフィゴは骨転移を有するCRPCに対して有効性が確認された、世界初のα線放出放射性医薬品である。有効成分の塩化ラジウム223Raは活性本体のラジウム223がカルシウムと同じアルカリ土類金属であり、カルシウムと同様に骨転移巣のような骨代謝が亢進している部位に集積する。高エネルギーのα線を放出することで、近接する腫瘍細胞のDNA二重鎖切断などを誘発し、腫瘍の増殖を抑制すると推測されている。

 内臓転移がなく、症候性骨転移を有するCRPC患者を対象とした国外共同第3相臨床試験では、プラセボと比較して全生存期間、症候性骨関連事象発現までの期間を有意に延長した。2013年5月に米国で承認されて以降、2015年10月までにEU加盟28カ国を含む世界45カ国で承認されている。

 国外共同第3相臨床試験では64.3%に副作用が認められている。悪心(20.8%)、貧血(18.3%)、下痢(16.7%)、骨痛(15.8%)、疲労(12.2%)などがあり、重大なものは貧血などの骨髄抑制が報告されている。

 本剤は放射性医薬品のため、取り扱い等に十分注意する。投与中及び投与後6ヵ月間は適切な避妊を行うように患者に指導することと、生殖可能な年齢の患者への投与では性腺に対する影響を考慮しなければならない。

 本剤は明記してある検定日時の時点で1バイアル(5.6mL)にラジウム223を6160kBq有する製剤である。実際の投与に当たっては患者の体重やラジウム223の減衰を考慮し、投与量を算出しなければならない。