2016年5月25日、抗てんかん薬ビガバトリン(商品名サブリル散分包500mg)が薬価収載された。本薬は3月28日に製造販売が承認されていた。適応は「点頭てんかん」で、生後4週以上の患者に1日50mg/kgから投与開始し、患者の状態により3日以上の間隔を空けて1日50mg/kgを超えない範囲で漸増する。1日最大量は150mg/kg又は3gのいずれか低い方をこえないようにし、どちらの場合も1日2回、用時溶解する。

 点頭てんかんはウエスト症候群とも呼ばれ、通常1歳未満の乳児に発症する難治性のてんかん症候群だ。ヒプスアリスミアと呼ばれる異常脳波、精神運動発達遅滞、スパズムの3つを主な症状とする。発生率は出生1万件に対して2〜5人で、日本では約3000人の患者がいると推定されており、発作予後や知的予後は不良であることが知られている。点頭てんかんの治療に使用されている薬剤は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のテトラコサクチド酢酸塩(商品名コートロシンZ) や抗てんかん薬、ビタミンB6療法などである。

 しかしこれらの薬剤は、投与初期には多くの患者で効果があるものの、再発率が高く、長期に効果が持続する症例もごくわずかに限られている。さらにACTHの使用は、経口ステロイドの場合と同様に多様な副作用が出現し、時に重篤なものも認められるという課題がある。

 点頭てんかんに対してバルプロ酸ナトリウム(商品名デパケン、セレニカ他)といった既存の抗てんかん薬も使用されるが、これらの薬剤の効果は対照試験でほとんど証明されておらず、高度な有害事象の発現も指摘されている。

 ビガバトリンはγ-アミノ酪酸(GABA) の異化に関わる酵素であるGABAアミノ基転移酵素(GABA-T)に擬似基質として不可逆的に結合して酵素活性を阻害する。これにより脳内のGABA濃度が増加して、抗てんかん作用を発揮すると推測されている。

 欧米の治療ガイドラインでは、GABA分解酵素阻害薬のビガバトリンが点頭てんかんに対する数少ない治療薬の1つとして位置付けられている。しかし日本では未承認薬であったことから、治療に際して個人輸入の必要があった。そのため、関連学会(日本てんかん学会、日本小児神経学会)がビガバトリン承認の要望を出し、2010年厚労省の「医療上の必要の高い未承認薬・適応外薬検討会議」にてビガバトリンが評価され、承認に至った。日本におけるビガバトリンは1990年代に抗てんかん薬として開発が行われていたものの、海外での不可逆性の視野狭窄の副作用報告があったことから、開発が中止された経緯がある。

 日本の点頭てんかん患者を対象とした国内臨床試験や今までの海外臨床試験データから、有効性と安全性が確認されている。海外では2009年に米国で承認されて以降、2015年12月までに世界50カ国以上で臨床使用された。日本では2014年9月希少疾病用医薬品に指定された。

 国内臨床試験では臨床検査値異常を含む副作用が82.6%に認められている。主なものは激越・傾眠(各34.8%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ減少(21.7%)、不眠症(13.0%)、食欲減退(8.7%)で、重大なものは視野狭窄、視力障害、視神経萎縮、視神経炎などがある。副作用や安全性に関しては、最新の添付文書を確認する必要がある。特に海外の試験では小児、成人でそれぞれ20%、36.5%で1回以上の両側性求心性視野狭窄が認められている。

 投与により不可逆的な視野狭窄の起こる危険性が高いため、厚生労働省は製造会社に対して、サブリル処方登録システムなどの厳格な安全管理体制の構築を指示しているほか、眼科検査に精通した眼科専門医と連携が可能な登録医療機関での投与に限定されている。