2016年3月28日、抗悪性腫瘍薬セリチニブ(商品名ジカディアカプセル150mg)の製造販売が承認された。適応は「クリゾチニブに抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」。用法用量は1日1回750mgを空腹時に投与となっている。

 肺癌のうち、約85%は非小細胞肺癌(NSCLC)といわれており、そのうち75%は診断された時点で進行又は転移が認められ、その5年生存率はわずか6%である。また、従来の標準治療である白金併用療法の進行NSCLCに対する奏効率は15〜35%と言われる。NSCLCのうち、日本人の研究者からEML4(微小管会合蛋白)とALK(未分化リンパ腫キナーゼ)の遺伝子が融合したEML4-ALK遺伝子が発症に大きく関与しているタイプの癌があることが報告された。具体的には、EML4-ALK融合遺伝子から産生されるEML-ALK融合蛋白質は、内在するチロシンキナーゼが恒常的に活性化することで強力な癌化能を有する。これまでの調査では、NSCLCの3〜5%程度がALK融合遺伝子陽性だと推定されている。

 この発見を受けて、近年ALK受容体チロシンキナーゼ(RTK)とその発癌性変異体(ALK融合蛋白質及び特定のALK変異体)を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬が開発・承認されてきた。2012年5月のクリゾチニブ(商品名ザーコリ)、2014年9月のアレクチニブ(商品名アレセンサ)である。しかし、既存のALK阻害薬に不耐容、効果不十分、あるいは一旦効果があったものの耐性を獲得してしまい増悪する症例も少なくない。

 今回承認されたセリチニブは、クリゾチニブなどと同様にALKのリン酸化阻害作用により、癌細胞の増殖を抑制する強力かつ選択的なALK阻害薬である。2012年2月から実施された、白金系抗悪性腫瘍薬及びクリゾチニブによる治療歴を有するALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした国際共同第2相臨床試験(日本を含む)では、セリチニブの良好な抗腫瘍効果と忍容性が認められた。また、脳転移を有するALK融合遺伝子陽性のNSCLC患者において、脳転移病変に対する抗腫瘍効果が認められた。

 セリチニブは、2014年4月に米国、2015年5月にEUで承認されて以降、2016年3月までに、アジアを含む世界50カ国以上で承認されている。日本では2015年6月希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)として指定されていた。

 臨床試験では96.4%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。悪心(77.9%)、下痢(77.1%)、嘔吐(58.6%)、ALT増加(37.9%)、食欲減退(35.7%)、AST増加(28.6%)があり、重大なものは間質性肺疾患、肝機能障害、QT間隔延長、徐脈、重度の下痢、高血糖・糖尿病、膵炎が報告されている。

 なお、厚生労働省により医療機関や関連学会(日本呼吸器学会)に対して致死的な間質性肺疾患などの重篤な副作用を防止するための留意事項が伝達されている。また、本薬は食後に投与した場合にCmax及びAUCが上昇するので、食事の前後2時間以内の投与を避け、空腹時に投与する。