2016年3月28日、抗精神病薬アセナピンマレイン酸塩(商品名シクレスト舌下錠5mg、同錠10mg)の製造販売が承認された。適応は「統合失調症」で、1回5mgを1日2回舌下投与する。維持用量は1回5mg、1日2回で、年齢や症状により、1回10mg、1日2回まで増量できる。

 統合失調症は長期にわたる維持療法が必要な慢性の精神疾患であり、維持治療期における精神症状の再発、再燃防止と患者のQOL向上が重要な治療目標となる。

 この維持治療に使用する薬剤として、以前は定型抗精神病薬のクロルプロマジン(商品名コントミン他)やハロペリドール(商品名セレネース他)などが広く用いられてきたが、最近では、統合失調症の治療ガイドラインでも非定型抗精神病薬が第一選択薬に位置づけられるようになっている。具体的には、リスペリドン(商品名リスパダール他)などのセロトニン・ドパミン遮断薬、オランザピン(商品名ジプレキサ)などの多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)、アリピプラゾール(商品名エビリファイ)が属するドパミン部分作動薬などが使用されている。

 今回承認されたアセナピンは、オランザピンやクロザピン(商品名クロザリル)、クエチアピン(商品名セロクエル)と同じMARTAに属する薬剤である。セロトニン5-HT2受容体とドパミンD2受容体などに対する拮抗作用から、統合失調症の陽性症状(妄想、幻覚など)と陰性症状(情動の平板化、情動的引きこもりなど)の両方に効果を発揮する。

 アセナピンは、消化管吸収時の初回通過効果が大きくバイオアベイラビリティが低いことから口腔粘膜から速やかに吸収される速崩性の舌下錠として開発された、日本初となる統合失調症治療用の舌下錠である。

 また、既存の非定型抗精神病薬は有害事象の軽減のため有効用量に到達するまで漸増する必要があったが、本薬は開始用量と維持用量が同一であり、治療早期から有効用量の投与が可能となっている。

 本薬は、日本人を含むアジア人集団の急性増悪期の統合失調症患者を対象としたプラセボ対照比較試験(国際共同第3相試験)と長期投与試験(国際共同長期継続投与試験、国内長期投与試験)などで、52週間にわたって有効性(陽性症状と陰性症状の改善)や安全性が示された。

 海外では、2009年8月米国、2010年9月欧州連合(EU)で承認されて以降、2016年1月までに世界61カ国で承認されている。

 臨床試験では副作用が66.2%に認められている。主な副作用は傾眠(12.9%)、口の感覚鈍麻(10.1%)などであり、重大な副作用は悪性症候群、遅発性ジスキネジア、肝機能障害、ショック、アナフィラキシー、舌腫脹、咽頭浮腫、高血糖などが報告されている。