2016年3月18日、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬デュロキセチン(商品名サインバルタカプセル20mg、同カプセル30mg)の適応が追加された。新しく追加された適応は「慢性腰痛症に伴う疼痛」で、1日1回60mgを朝食後に経口投与する。1日20mgより開始し、1週間以上の間隔をあけて1日20mgずつ増量する。

 なお本薬は、2010年1月に「うつ病・うつ状態」の適応で承認され、その後、「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」(2012年2月)、「線維筋痛症に伴う疼痛」(2015年5月)と適応が追加されている。

 有訴者率が多い腰痛症は、確定した定義はないものの、主に疼痛部位、発症からの有症期間、原因などから定義されている。部位としては、一般的に触知可能な最下端の肋骨と殿溝の領域に位置する疼痛とされている。

 腰痛症の中でも発症から3カ月以上疼痛が持続するものを慢性腰痛症と定義している。日本整形学会および日本腰痛学会の「腰痛診療ガイドライン2012」によると、慢性腰痛症を含めた腰痛症の薬物治療としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンが日本と米国で第一選択薬となっている。

 デュロキセチンは、ミルナシプラン(商品名トレドミン他)やベンラファキシン(商品名イフェクサーSR) と同じセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)に属する薬剤である。SNRIはヒスタミン受容体やアドレナリン受容体に対して著明な親和性を示さない特徴がある。

 デュロキセチンの腰痛症に対する効果としては、既適応の線維筋痛症と同じく、内因性の疼痛抑制機構に関与するセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで、下行性疼痛抑制系を賦活化し、鎮痛効果をもたらすと推測されている。

 本薬は、NSAIDsの効果が不十分な慢性腰痛症患者を対象に、国内で二重盲検並行群間比較試験が実施され、プラセボ群に対する優越性を示した。また50週間の長期投与試験でも、長期間にわたる鎮痛効果の維持が認められた。

 国内臨床試験では副作用(臨床検査値異常を含む)が50.9%に認められている。主な副作用は傾眠(20.1%)、悪心(10.2%)などであり、重大な副作用としてセロトニン症候群、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、痙攣、幻覚、肝機能障害、肝炎、黄疸、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、アナフィラキシー反応、高血圧クリーゼ、尿閉が報告されている。

 今回適応が追加されたデュロキセチンは、自殺念慮、自殺企図、敵意、攻撃性などの精神神経系の重篤な副作用リスクが懸念されている。

 そのためデュロキセチンの慢性腰痛症への適応追加にあたり、厚生労働省は適正使用への留意を求める通知を出した。具体的には、本薬を投与する際は(1)最新の診断基準に基づき慢性腰痛症と診断した患者に限定して投与すること、(2)精神神経系の副作用発現リスクを考慮し投与の適否を慎重に判断すること――を求めている。