2016年2月29日、抗悪性腫瘍薬エリブリンハラヴェン静注1mg)の適応が追加された。新しい適応は「悪性軟部腫瘍」で、1日1回1.4mg/m2を2〜5分間かけて週1回、2週連続で静脈内に投与し、3週目は休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお本薬は、2011年7月より「手術不能または再発乳癌」の適応で臨床使用されている。

 悪性軟部腫瘍とは、脂肪、筋肉、神経、血管などの軟部組織に発生する悪性腫瘍である。国内発生率は10万人あたり2〜3人で、全ての悪性腫瘍のうち1%未満と稀だが、予後は不良で重篤な疾患とされる。

 悪性軟部腫瘍は組織型ごとに化学療法に対する感受性が異なるため、臨床現場ではより多くの化学療法の選択肢が必要と考えられており、新たな作用機序を有し高い効果が期待できる薬剤の開発・承認が強く望まれている。

 国内で悪性軟部腫瘍の適応を有する抗悪性腫瘍薬は、アントラサイクリン系製剤のドキソルビシン(商品名アドリアシン他)、アルキル化薬のイホスファミド(商品名イホマイド)、経口チロシンキナーゼ阻害薬のパゾパニブ(商品名ヴォトリエント)、2015年12月に発売されたアルカロイド製剤のトラベクテジン(商品名ヨンデリス)の4種類が使用されていた。

 今回適応が追加されたエリブリンは、微小管阻害薬に分類される薬剤である。

 微小管は2種類の蛋白質(α、βチューブリン)が重合することで形成され、細胞分裂や細胞内小器官の配置、物質輸送などで重要な役割を担っている。エリブリンはチューブリンの重合を阻止することで、細胞分裂を停止させてアポトーシスによる細胞死を誘導し、がん細胞の増殖を抑制する。

 前治療歴を有する進行または再発悪性軟部腫瘍患者を対象とした国内第2相試験では、エリブリン単独療法での有用性と安全性が報告されている。海外第3相試験では、全生存期間でダカルバジンに対する本薬の優越性が確認された。

 国内試験では副作用が全例に認められている。主な副作用は血液毒性(白血球減少[100%]、好中球減少[98.0%]、リンパ球減少[78.4%]、貧血[47.1%])、発熱(41.2%)、倦怠感(39.2%)、悪心(37.3%)などであった。

 重大な副作用としては、2011年の使用開始からこれまでに、骨髄抑制、感染症、末梢神経障害(末梢性ニューロパチー)、肝機能障害、間質性肺炎、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、多形紅斑が報告されている。

 薬剤使用に際しては、従来のがん化学療法と同様に、禁忌事項の確認などを含めて患者の選択をしっかりと行うことが必要である。また投与の前に、患者とその家族に有効性と危険性を十分に説明し、同意を得なければならない。