2016年1月22日、高コレステロール血症治療薬エボロクマブ(商品名レパーサ皮下注140mgシリンジ、同皮下注140mgペン)の製造販売が承認された。適応は「家族性高コレステロール血症高コレステロール血症(ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分な場合に限る)」で、基本的に4週間に1回420mgを皮下投与する。

 具体的には、家族性高コレステロール血症のヘテロ接合体および高コレステロール血症患者は、2週間に1回140mgまたは4週間に1回420mgを投与する。家族性高コレステロール血症ホモ接合体は、4週間に1回420mgを投与し、効果不十分な場合は2週間に1回420mgの投与も可能である。低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)アフェレーシスの補助として使用する場合には、開始用量として2週間に1回420mgを投与する。

 高コレステロール血症、特に高LDL-C血症は血中のコレステロールや脂質量が異常を示す代表的な脂質異常症である。高LDL-C血症は、冠動脈疾患および脳梗塞の危険因子であることが明らかとなっており、特に心血管イベントの発現リスクが高い患者には、より厳格なLDL-Cコントロールが必要不可欠となっている。

 家族性高コレステロール血症は、遺伝子の突然変異が原因で生じる遺伝子疾患であり、低年齢時よりLDL-C値が高くなることが認められている。家族性高コレステロール血症患者は、コレステロール調節遺伝子の片方だけ変異しているヘテロ接合体と、調節遺伝子が両方変異しているホモ接合体の2つに分かれている。患者はヘテロ接合体の方が多く、日本では約500人に1人の割合で発症している。またホモ接合体は、LDL-C値が正常値の6倍を超えることもあり、より重篤な症状を伴うことが報告されている。

 現在、LDL-C値低下を目的とした高コレステロール血症の治療には、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)単独または他の作用機序が異なる薬剤を併用した、経口薬による薬物治療が基本となっている。これらの治療により、多くの患者では有意なLDL-C値の低下が認められているが、家族性高コレステロール血症や虚血性心疾患の既往などを有する一部の患者では、LDL-C値の低下が不十分となることが問題となっていた。

 今回承認されたエボロクマブは、LDL受容体分解促進タンパク質であるPCSK9(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)をターゲットとする、PCSK9阻害薬と呼ばれる新しい機序の薬剤である。本薬はヒト型モノクローナル抗体製剤であり、PCSK9とLDL受容体の結合を阻害することで、LDL受容体の分解を抑え、血中LDL-Cの肝細胞内への取り込みを促進する作用を持つ。

 国内第3相臨床試験では、スタチンなどの脂質低下療法にエボロクマブを追加投与することで、LDL-C値が顕著に低下し、かつ長期(48週)にわたり効果が安定することが認められた。海外では、2016年1月現在、米国、欧州連合(EU)、カナダ、オーストラリアで承認されている。国内で承認されたPCSK9阻害薬は本薬が初めてとなる。

 臨床試験に参加した日本人のうち、9.9%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は糖尿病(1.4%)、注射部位反応・肝酵素異常・CPK上昇・頚動脈内膜中膜肥厚度増加・筋肉痛(各0.7%)であった。

 なおエボロクマブを使用する際は、スタチンを必ず併用することに注意する。