2016年1月22日、抗悪性腫瘍薬ベキサロテン(商品名タルグレチンカプセル75mg)の製造販売が承認された。適応は「皮膚T細胞性リンパ腫」で、1日1回300mg/m2を食後に経口投与する。

 皮膚T細胞性リンパ腫CTCL)は、悪性リンパ腫の中でも消化管や皮膚、脳など、リンパ節以外の臓器に発症することが多い非ホジキンリンパ腫の一種である。初診時に皮膚以外の臓器に病変を認めない原発性皮膚リンパ腫のうち、T細胞性リンパ腫を総称してこう呼ぶ。

 CTCLの大半を占める菌状息肉症では、「紅斑期」「扁平浸潤期」という緩慢に経過する時期を経て、多発性皮膚腫瘤を主体とする「腫瘍期」に至る。腫瘍期の患者では、臓器浸潤、感染症などを併発して極めて予後が悪く、死に至らないまでも、腫瘤の多発や再発などにより患者のQOLは著しく低下し、社会生活にも支障を来たすことが多い。

 ただし日本では、諸外国に比べてCTCLの罹患患者数が少なく、日本におけるCTCL発生頻度は欧米白人の10〜20%程度と推定されている。そのため新薬を開発するための臨床試験が難しく、これまで欧米で汎用されている治療薬の導入が遅れていたが、2011年9月にようやく、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害する経口薬ボリノスタット(商品名ゾリンザ)が臨床使用されるようになった。

 今回承認されたベキサロテンも、欧米で汎用されているCTCL治療薬の1つである。本薬はレチノイドの一種であり、レチノイドX受容体に選択的に結合して転写を活性化することで、アポトーシス誘導および細胞周期停止作用を示し、腫瘍増殖を抑制する。

 海外では1999年米国をはじめとして、2015年8月現在、世界39カ国で承認されており、欧米での主要なガイドライン(NCCN、EORTC)においてCTCLに対する治療薬の1つとして推奨されている。

 日本では2013年3月に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けており、国内第I/II相臨床試験(B-1101試験)と海外臨床試験などから、有効性と安全性が確認されたことで今回の承認に至った。

 国内臨床試験では、副作用(臨床検査値異常を含む)が全例に認められている。主な副作用は甲状腺機能低下症(93.8%)、高コレステロール血症(81.3%)、高トリグリセリド血症(75.0%)などであり、重大な副作用は脂質異常症、膵炎、下垂体性甲状腺機能低下症、低血糖、白血球減少症、好中球減少症、貧血、肝不全、肝機能障害、感染症、間質性肺疾患、血栓塞栓症、横紋筋融解症が報告されている。

 本薬に関しては厚生労働省よりベキサロテン製剤の重篤な副作用発現への注意喚起がなされている。また、催奇形性を有することから妊婦への投与が禁忌であるなど、患者選択を十分行わなければならない。