2016年1月12日、肺動脈性肺高血圧症治療薬ボセンタンの小児用製剤(商品名トラクリア小児用分散錠32mg)が発売された。本製剤は、2015年9月28日に製造販売が承認され、同年11月26日に薬価収載されている。

 適応は「肺動脈性肺高血圧症」で、乳児、幼児または小児に1回2mg/kgを1日2回朝夕、用時、少量の水に分散させ経口投与する。最大投与量は1回120mg、1日240mgとする。本製剤は、小児が服用しやすく、体重ごとに用量調節可能な分散製剤となっている。

 肺高血圧症は、肺動脈圧の上昇を認める病態の総称であり、中でも肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)は、生命予後が極めて悪いことが知られている。特に小児でのPAHは、成人と同様もしくは成人より急速に病態が進行し予後不良である。

 PAHの発症機序は完全には解明されていないものの、エンドセリン、プロスタサイクリン(PGI2)、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)が強く関連していることが判明している。

 現在、成人PAHの薬物治療としては、プロスタグランジン誘導体のベラプロストナトリウム(商品名ベラサスLA、ケアロードLA)、PDE5阻害薬のシルデナフィル(商品名レバチオ)やタダラフィル(商品名アドシルカ)、エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタン(商品名トラクリア)やアンブリセンタン(商品名ヴォリブリス)、マシテンタン(商品名オプスミット)などが使用されている。

 しかし小児PAHに対しては、日本で適応および用法用量が承認されている薬剤がなく、成人PAHに承認されている薬剤を用いて、成人での有効性と安全性等を参考に用量を調節して使用しているのが現状であった。

 そこで日本小児循環器学会より開発要望があり、厚労省「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で高い評価がなされたため、製薬会社に開発が要請され、ボセンタンの小児用製剤である本薬の開発・発売に至った経緯がある。

 国内および海外での小児PAH患者を対象とした臨床試験において、有効性と安全性が確認された。海外では2015年3月現在、EU諸国およびスイス、メキシコで承認されている。

 国内臨床試験では副作用(臨床検査値異常を含む)が16.7%に認められている。主な副作用は血中リン増加であり、重大な副作用としては重篤な肝機能障害、汎血球減少、白血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血、心不全、うっ血性心不全などが報告されている。