2015年11月26日、多発性硬化症治療薬グラチラマー酢酸塩(商品名コパキソン皮下注20mgシリンジ)が薬価収載と同時に発売された。本薬は9月28日に製造販売が承認されている。適応は「多発性硬化症の再発予防」で、1日1回20mgを皮下に投与する。

 多発性硬化症は、中枢神経系の炎症性脱髄性障害を主徴とし、若年成人に多く発生する自己免疫疾患である。一般的な症状として、視覚および眼球運動異常、感覚異常、筋力低下、痙縮、排尿不全、認知症機能障害などが認められている。

 多発性硬化症は(1)発症初期から慢性進行性の経過をたどる一次進行型、(2)再発・寛解を繰り返す再発寛解型、(3)再発・寛解を経て進行型に転ずる二次進行型――に分類され、8割以上の患者は再発寛解型である。国内の患者数は約1万8000人と推定されており、厚生労働省は多発性硬化症を指定難病として医療費助成を行っている。

 多発性硬化症の治療としては、急性期にはステロイド薬などが使用され、対症療法として痙縮にバクロフェン(商品名リオレサール、ギャバロン)、排尿障害に抗コリン薬などが使用されている。また再発予防には、注射薬としてインターフェロンβ-1a(商品名アボネックス)、インターフェロンβ-1b(商品名ベタフェロン)、ナタリズマブ(商品名タイサブリ)が、経口薬としてフィンゴリモド塩酸塩(商品名イムセラ、ジレニア)が臨床使用されている。

 グラチラマーは、4種類のアミノ酸(L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシン、L-リシン)から構成されるポリペプチドの混合物であり、免疫応答プロセスを調節することで多発性硬化症の再発を予防する注射薬である。国内外の臨床試験では、再発寛解型患者において疾患活動性の指標であるMRIのT1ガドリニウム増強病巣数を減少し、MSの再発回数を減少させたことが確認された。

 海外では、1996年米国およびイスラエルをはじめ、2014年10月現在、世界59カ国で承認されている。日本においては、2009年3月希少疾病用医薬品に指定され、2010年5月厚生労働省より「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬」として製薬会社に開発要請されて、承認に至った経緯がある。

 国内外の臨床試験では、ほとんどの症例で副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は紅斑などの注射部位反応であり、重大な副作用として注射直後反応(41.3%)、注射部位壊死、過敏性反応などが報告されている。

 本薬は、患者が自己注射可能な1回分を充填したプレフィルドシリンジとなっている。医師が患者に自己注射の導入を認めた場合には、該当患者に本薬と同時発売となった専用の注入補助器(商品名オートジェクト2)を用いることなど、使用方法について十分指導することが必要である。