2015年8月31日、抗悪性腫瘍薬パノビノスタット乳酸塩(商品名ファリーダックカプセル10mg、同カプセル15mg)が発売された。適応は「再発または難治性の多発性骨髄腫」である。ボルテゾミブとデキサメタゾンと併用し、1日1回20mgを週3回、2週間(1、3、5、8、10、12日目)経口投与した後、9日間休薬(13〜21日目)の3週間を1サイクルとして繰り返す。

 多発性骨髄腫は、骨髄中の白血球の一種である形質細胞が癌化する、難治性の造血器腫瘍である。貧血、腎障害、骨痛および骨折、血中カルシウム濃度の上昇などの症状が出現し、再発を繰り返し治癒が困難な疾患とされる。

 日本における推定罹患患者数は約1万4000人、人口10万人当たりの推計年齢調整罹患率は約2人で、年間死亡者数は約4066人と報告されている。また60歳以上で発症し、40歳以下での発症は稀である。

 再発または難治性の多発性骨髄腫に対する治療としては、プロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ(商品名ベルケイド)や、免疫調節薬のサリドマイド(商品名サレド)、レナリドミド(商品名レブラミド)、ポマリドミド(商品名ポマリスト)などを用いたレジメンがこれまで主に使用されていた。従来の化学療法より有効性は向上しているものの、このレジメンを用いてもほとんどの患者で再発または病勢進行が認められるなど、効果不十分となっていた。

 今回承認されたパノビノスタットは、ヒストン脱アセチル化酵素HDAC)を阻害することで抗腫瘍作用を発揮するHDAC阻害薬である。HDAC阻害薬としては、ボリノスタット(商品名ゾリンザ)が皮膚T細胞性リンパ腫の適応で2011年9月より臨床使用されているが、多発性骨髄腫に適応を持つHDAC阻害薬は本薬が初となる。

 多発性骨髄腫細胞では、正常細胞に比べてHDAC活性の異常な上昇が認められており、その活性化が癌化、特に白血病やリンパ腫、多発性骨髄腫のような造血器腫瘍化を促進することが報告されている。

 再発または難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした、3剤(パノビノスタット、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)併用の国際共同第3相臨床試験では無増悪生存期間を有意に延長し、完全奏効および完全に近い奏効の割合は、プラセボ併用群15.7%に対しパノビノスタット併用群は27.6%と有意に高かった。

 海外においては、2015年2月に米国で、2015年9月に欧州で承認されている。日本では、2014年9月に希少疾病用医薬品の指定を受けている。

 本薬使用においては、多発性骨髄腫を含む造血器悪性腫瘍治療に精通している医師のもとで行うこと、添付文書などを熟読し治療初期は入院またはそれに準ずる管理下で適切な処置を行うことが警告欄に記載されている。また、国内での治験症例が限られていることから一定期間、全症例を対象とした使用成績調査を実施することが承認条件となっていることにも留意する。