2015年8月31日、抗線維化薬ニンテダニブエタンスルホン酸塩(商品名オフェブカプセル100mg、同カプセル150mg)が発売された。適応は「特発性肺線維症」で、1回150mg(患者の状態により1回100mg)を1日2回朝・夕食後に経口投与する。

 特発性肺線維症IPF)とは、肺胞壁の線維化が進行することにより、不可逆性の蜂巣肺(高分解能CTで肺が蜂の巣様に写る状態)を形成する疾患である。無症状の場合もあるが、乾性咳嗽や労作時呼吸困難を主症状とする。

 予後は不良であり、IPF診断確定後の平均生存期間は2.5〜5年で、急性増悪後の平均生存期間は2カ月以内と報告されている。また高確率で肺癌を合併することが知られている。

 IPF患者数は世界で10万人あたり14〜43人と推定されている。日本では、IPFを含む特発性間質性肺炎を医療費助成の対象となる難病(指定難病)として、公費助成を実施している。

 治療としては、鎮咳薬などを使用した対症療法のほか、以前は線維化の進行を抑制する目的でステロイド薬や免疫抑制薬が使用されていたが、近年の研究でその有効性が疑問視されている。2008年からはIPFに唯一適応を有したピルフェニドン(商品名ピレスパ)が使用されているが、副作用などの面から使用できない患者もおり、いまだ治療選択肢が限られているのが現状であった。

 ニンテダニブは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)および線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的とする低分子チロシンキナーゼ阻害薬である。IPFに適応を有する薬剤としては初の分子標的薬であり、病態に関与する線維芽細胞の増殖、遊走および形質転換に関わるシグナル伝達を阻害することで、肺線維化の進行を抑制することが期待されている。

 IPF患者を対象とした第3相国際共同試験(INPULSIS試験)で、本薬はIPF患者の呼吸機能低下(努力肺活量[FVC]の年間減少率)をプラセボに対し有意に抑制することが示された。海外では米国(2014年10月)、欧州(2015年1月)をはじめとして、2015年8月現在、世界34カ国で承認されている。

 INPULSIS試験では、主な副作用として下痢(53.6%)、悪心(19.1%)、肝酵素上昇(10.5%)、腹痛(10.2%)が報告された。重大な副作用としては重度の下痢、肝機能障害、血栓塞栓症、消化管穿孔、間質性肺炎が認められている。

 本薬使用においては、国内での治験症例が限られていることから、全症例を対象とした使用成績調査を一定期間実施することに留意する。