2015年6月26日、抗生物質製剤タゾバクタムピペラシリン(商品名ゾシン静注用2.25、同静注用4.5)に発熱性好中球減少症FN)の適応が追加された。FNに対しては、成人1回4.5g、小児1回90mg/kgを1日4回点滴静注する。小児の1回投与量は4.5gを超えてはならない。なお、必要に応じて緩徐に静注することもできる。

 急性白血病などの造血器疾患や固形癌の患者に対して、様々な化学療法や放射線療法を行う場合、これらの治療に起因する骨髄抑制を伴う好中球減少時の発熱性疾患としてFNが起こる危険性が高くなると言われている。FNは急速に重症化して致死的状況に陥ることが多いものの、広域抗菌薬の投与により改善することが認められている。

 FNに対する広域抗菌薬としては、メロペネム(商品名メロペン他)などのカルバペネム系抗菌薬、セフェピム(商品名マキシピーム他)などのセフェム系抗生物質が広く臨床使用されている。しかし海外に比べて使用可能な薬剤が限られているのが現状であった。

 ゾシンは、広域抗菌スペクトルを有するペニシリン系抗生物質ピペラシリンと、βラクタマーゼ阻害剤タゾバクタムを力価比8:1の割合で配合した注射用抗生物質製剤である。

 ピペラシリンは、ブドウ球菌属等のグラム陽性菌から緑膿菌を含むグラム陰性菌および嫌気性菌まで幅広い抗菌スペクトルを有するが、各種細菌が産生するペニシリナーゼ、セファロスポリナーゼおよび基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)などのβラクタマーゼにより加水分解される。

 本薬剤は、これらのβラクタマーゼを不可逆的に阻害するタゾバクタムをピペラシリンと配合することで、抗菌力低下を妨げた製剤であり、各種感染症の第1選択薬の1つとして世界中で汎用されている。

 本薬剤のFNへの適応は、海外ではすでに66カ国で認められており、主要なガイドラインにおいても第1選択薬として位置付けられている。このことから、日本化学療法学会など関連学会より「海外のおけるエビデンスがあり、ガイドラインや教科書などにおいても推奨されている薬剤」として、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に開発要望が出された。同会議にて医療上の必要性が高い薬剤と評価され、2010年12月から国内開発が行われて今回の適応追加に至った。

 国内第3相臨床試験(対象:成人および小児のFN患者)から、FN治療において既存の薬剤と同様に有効かつ安全に投与可能なことが確認されている。

 FNの臨床試験では、41.1%の副作用が認められている。主なものは下痢(11.6%)、肝機能異常(7.8%)、低カリウム血症(5.4%)などであり、重大なものはショック、アナフィラキシーなどが報告されている。

 なおFN適応追加に先立ち、従来の用時溶解型のバイアル製剤に加えて、薬剤と溶解液に区分された点滴静注用のダブルバッグ製剤(商品名ゾシン配合点滴静注用バッグ4.5)も2015年6月3日に発売された。細菌汚染や異物混入などの危険性を改善し、かつ溶解操作を含む調製作業の軽減化を図った製剤であり、バイアル製剤と同じく6月26日にFNの適応が追加されている。