2015年6月2日、持続性がん疼痛・慢性疼痛治療薬トラマドール塩酸塩徐放製剤(商品名ワントラム錠100mg)が発売された。適応は、非オピオイド鎮痛薬で治療困難な疼痛を伴う各種慢性疼痛に対する鎮痛である。1日1回100〜300mgを経口投与し、1日400mgを超えないこととなっている。

 同一成分の薬剤としては、即放性の内服製剤(商品名トラマールカプセル、トラマールOD錠)と注射製剤(商品名トラマール注)、アセトアミノフェンと配合した内服製剤(商品名トラムセット配合錠)が臨床使用されている。

 癌疼痛に対する薬物治療としては、一般的にWHO方式がん疼痛治療法があり、痛みの強さにより鎮痛薬を選択する「3段階除痛ラダー」が提唱されている。第1段階の軽い痛みにはアスピリンなどの非ステロイド消炎鎮痛薬などを使い、第2段階の軽度から中等度の痛みには弱オピオイド鎮痛薬のコデインやトラマドールを使う。第3段階の中等度から高度の痛みには、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどの強オピオイド鎮痛薬を使用する。

 トラマドールは、麻薬および向精神薬に指定されていない中枢性鎮痛薬である。オピオイド受容体作動作用およびモノアミン(ノルアドレナリン、セロトニン)再取り込み阻害作用などにより鎮痛効果を示し、モルヒネなど強オピオイド鎮痛薬と同じ鎮痛効果を示す用量で、便秘などの副作用が少ないという特徴を有している。

 ワントラムは、国内初となるトラマドール塩酸塩の徐放製剤である。1日複数回の服用が必要な既存の即放性製剤と比較して、患者の服薬アドヒアランス向上や安定した鎮痛効果が期待される。

 本薬は、即放性の周辺部分と徐放性の中心部分から構成されている二重構造を持つ製剤である。本薬は1日1回投与で、既存の即放性カプセル(1日4回)と同等の血漿中濃度推移を示し、24時間血中濃度を維持することが確認されている。癌疼痛を対象とした臨床試験では、既存の即放性カプセル剤から同用量の本薬への切り替え投与での非劣性が認められている。

 慢性疼痛を対象とした臨床試験から副作用が90.6%に認められている。主な副作用は便秘(61.9%)、悪心(51.9%)、傾眠(28.2%)、嘔吐(22.6%)などであり、重大な副作用としてはショック、アナフィラキシー、呼吸抑制、痙攣、依存性、意識消失が報告されている。