2015年5月20日、抗悪性腫瘍薬レンバチニブメシル酸塩(商品名レンビマカプセル4mg、同カプセル10mg)が薬価収載と同時に発売された。適応は「根治切除不能な甲状腺癌」で、1日1回24mgを経口投与する。

 甲状腺癌は、気管付近、頸部の前面に位置する甲状腺の組織に生じる癌である。男性より女性に多く発症し、日本の総患者数は約1万3000〜2万9000人と推定されている。最も多くみられる甲状腺癌の乳頭癌と濾胞癌(ヒュルトレ細胞癌を含む)は、分化型甲状腺癌DTC)として分類され、甲状腺癌の95%を占めている。

 甲状腺癌の多くは、外科的手術や放射性ヨウ素療法などでの治療が可能である一方、根治切除不能な甲状腺癌に対する治療選択肢は限られているのが現状であった。さらに放射性ヨウ素療法によって病変が制御不能となったDTC、並びに切除不能の甲状腺髄様癌および甲状腺未分化癌では標準治療が存在しないことから、新たな治療薬の開発承認が望まれていた。

 レンバチニブは、根治切除不能なDTCに適応を有するソラフェニブトシル酸塩(商品名ネクサバール)などと同じ、キナーゼ阻害薬である。なお適応の範囲は、ソラフェニブはDTCのみ、レンバチニブは甲状腺癌である。

 主な作用機序としては、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1〜3)、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(FGFR1〜4)、Rearranged During Transfectionがん原遺伝子(RET)などの阻害により抗悪性腫瘍効果を発揮する。

 レンバチニブは、他のキナーゼ阻害薬では標的とならなかったFGFRに対する阻害活性を有し、かつVEGFRも阻害することで、FGFRとVEGFRが協同的に働いて惹起される腫瘍血管新生を強力に阻害する。また、多くの甲状腺癌の発症と増殖に関わるRETを阻害することで、DTCをはじめとするほとんどの甲状腺癌に対して治療効果を期待できると考えられている。

 国際共同試験や国内外の臨床試験では、既存の治療で抵抗性・難治性・切除不能の甲状腺癌患者に対してすぐれた有効性を示し、安全性に関しても休薬や減量などで管理可能であることが確認された。

 レンバチニブは2015年2月に米国で発売されており、日本では2012年8月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 日本人を含む国際共同第3相臨床試験(対象:放射性ヨウ素治療抵抗性・難治性のDTC患者)で、97.3%に副作用が認められている。主な副作用は高血圧(67.8%)、下痢(60.9%)、食欲減退(51.7%)などであり、重大な副作用として高血圧、出血、動脈・静脈血栓塞栓症などが報告されている。

 なお本薬は、国内外の臨床試験などで副作用発現が多いこと、承認時までの治験症例が少ないことから、使用に際しては一定期間、全使用症例に使用成績調査をすることが承認条件となっている。