2015年3月26日、ポリペプチド系抗菌薬コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(商品名オルドレブ点滴静注用150mg)の製造販売が承認された。適応菌種は「コリスチンに感性のグラム陰性桿菌(大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、緑膿菌、アシネトバクター属)」で、βラクタム系、フルオロキノロン系およびアミノ配糖体系の3系統の抗菌薬に耐性を示す各種感染症に対し、1回1.25〜2.5mg/kgを1日2回、30分以上かけて点滴静注する。

 コリスチン(別名ポリミキシンE)は、1950年代に日本で発見された、サイクリックポリペプチド系抗菌薬である。1960〜1970年代にかけてグラム陰性桿菌由来の感染症に使用されてきたが、腎機能障害や神経毒性の頻度が高いこと、βラクタム系およびアミノグリコシド系抗菌薬が開発・使用されたことなどにより、日本国内で注射製剤は使用されなくなり、経口および外用製剤のみが臨床使用されていた。

 近年、既存の薬剤では効果が期待できない多剤耐性緑膿菌多剤耐性アシネトバクター属など多剤耐性グラム陰性桿菌による院内感染症の発現が社会的な問題となっている。その治療に関しては、海外の標準的な教科書やガイドラインで、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS-Na)注射製剤を用いた治療が推奨されている。さらに国内の呼吸器感染症に関するガイドライン・成人院内肺炎診療ガイドラインおよび抗菌薬使用ガイドラインなどでも、当時日本で未承認であったCMS-Na注射製剤の治療が紹介されていた。これらのことから、日本においてもCMS-Na注射製剤を改めて承認することが熱望されていた。

 今回の承認には、2009年に「医療上の必要性の高い未承認の医薬品または適応の開発の要望に関する意見募集」が実施された際に、日本化学療法学会から開発要請が提出された経緯がある。その後、2010年4月の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が評価され、厚生労働省より製薬会社へ開発要請がなされ、開発・承認に至った。

 2010年11月には希少疾病用医薬品として指定され、日本の健康成人男性を対象とした第1相臨床試験で安全性が確認された。

 多剤耐性グラム陰性桿菌患者を対象とした6つの海外臨床試験では、主な副作用として腎機能障害(21%)、神経系障害(2%)が認められ、重大な副作用として腎不全、腎機能障害、呼吸窮迫、無呼吸、偽膜性大腸炎が示されている。

 本製剤は、既存の薬剤では期待できない感染症に対する最終救済薬と評価されている。しかし、副作用の発現など過去の経緯などから、薬剤使用に関しては適応する感染症や患者の選択、さらに投与中の患者の状態観察を定期的に行う必要がある。

 なお本薬剤は、承認時までの日本における対象患者が少ないこともあり、製造販売後も一定数の症例が集積するまでは、全症例に使用成績調査を実施することとなっている。