2014年12月26日、抗悪性腫瘍薬ベムラフェニブ(商品名ゼルボラフ錠240mg)の製造販売が承認された。適応は「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」で、1回960mgを1日2回経口投与する。

 黒色腫は、皮膚の色素を産生する母斑細胞が悪性化した腫瘍であり、皮膚がんの中で最も悪性度が高いと言われている。発生部位としては足底が最も多く、体幹、顔面、爪などのあらゆる皮膚に発生する可能性がある。発生原因は、白人の罹患率が極めて高いことなどから紫外線が関与するという意見もあるが、詳細は解明されていない。臨床症状は多彩であり、黒色調の色素斑ないし腫瘤がみられ、進行速度や症状によって4つの病型(末端黒子型、結節型、表在拡大型、悪性黒子型)に分類されている。

 2012年には、全世界で推定23万人が悪性黒色腫と診断されている。早期の段階で治療すれば大部分が治癒可能だが、皮膚やリンパ節に転移を認めるIV期まで進行すると、5年生存率は10%前後になると言われている。

 現時点の治療法としては、摘出手術などの外科療法の他に、速中性子線や重粒子線を用いた放射線療法、温熱療法、免疫療法、化学療法などが試みられている。日本では、進行性の悪性黒色腫に対する標準化学療法は抗悪性腫瘍薬ダカルバジンの単独療法のみであったが、2014年になり新しい作用機序を有したヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)が臨床使用されるようになった。

 しかし未だに悪性黒色腫に対する治療選択肢は限られており、さらに外科手術による切除が不能な悪性黒色腫の患者の予後は極めて悪いことから、新たな薬剤の開発・承認が望まれていた。

 BRAFは、細胞増殖のシグナル伝達で重要な働きを示すキナーゼ蛋白質である。転移性悪性黒色腫の約50%で、アミノ酸配列600番目のバリンが変異したBRAF(BRAF V600)が発現しており、恒常的に活性化して細胞増殖を促進していると考えられている。

 今回承認されたベムラフェニブは、BRAF V600キナーゼを選択的に阻害することで、癌細胞の増殖を抑制し抗悪性腫瘍効果を発揮する、新しい作用機序を有する低分子の分子標的薬である。

 化学療法歴のないBRAF V600遺伝子変異を有する根治切除不能な3/4期の悪性黒色腫患者を対象とした海外第3相臨床試験(NO25026試験)で、対照薬群に対して全生存期間および無増悪生存期間を有意に延長し、奏効率にも有意差が認められた。日本でもBRAF V600遺伝子変異を有した患者を対象に第1/2相臨床試験(JO28178試験)が行われ、日本人における有効性と安全性が確認されている。

 国内臨床試験で全例に副作用が認められていることに注意する。主な副作用は、関節痛・発疹(各90.9%)、筋骨格痛・脱毛症(各63.6%)、疲労(54.5%)などであった。海外での臨床試験などから、重大な副作用として有棘細胞癌や悪性腫瘍(二次発癌)、アナフィラキシー、過敏症などが認められている。

 なお、本薬の適応患者を特定するため、BRAF V600遺伝子変異を検出するコンパニオン診断薬が既に保険収載され、発売されている。