2014年3月24日、睫毛貧毛症治療薬ビマトプロスト(商品名グラッシュビスタ外用液剤0.03%3mL、同外用液剤0.03%5mL)の製造販売が承認された。片眼ごとに、1滴を専用のアプリケータに滴下し、1日1回就寝前に上眼瞼辺縁部の睫毛基部に塗布する。なお、同一成分・濃度製剤として2009年10月から緑内障・高眼圧症治療薬ルミガン点眼薬が臨床使用されている。

 睫毛貧毛症は、睫毛(まつ毛)が不足した状態で、眼への異物回避や疾患予防などに支障を来すことが知られている。これまで日本においては、睫毛貧毛症に対する有効な治療薬は承認されていないのが現状であった。

 ビマトプロストは、内因性の生理活性物質プロスタグランジンF2αに類似した構造を有するプロスタマイド誘導体である。本薬は、従来のプロスタグランジン関連薬とは異なる受容体(プロスタマイド受容体)に作用することで強力な眼圧下降作用を発揮する薬剤であり、緑内障・高血圧症治療薬として使用されている。

 しかし承認時までの臨床試験では、睫毛の異常が46.13%認められ、睫毛の成長(長さ、太さ、多さ)を促進する作用を有することが示唆されたため、まずは海外で睫毛貧毛症患者を対象とした臨床試験が実施された。その結果、有効性及び安全性が確認されたことから、2008年米国で睫毛貧毛症治療薬として承認されて以来、2013年10月までに世界23カ国または地域で承認されている。

 その後の研究から睫毛に対する成長促進作用の機序としては、毛周期における成長期の延長作用が関与していることが示唆されている。ただし、眼瞼部の毛包におけるプロスタマイド受容体の有無、毛周期におけるプロスタマイド受容体の役割など、いまだに不明な点は多い。

 日本では、緑内障・高眼圧症治療薬として発売されているルミガン点眼液を適応外使用する例や、海外から個人輸入する例があると推察されることから、適正使用のため臨床試験が開始された経緯がある。

 日本で睫毛貧毛症治療薬として初となる本薬の承認は、適正使用が促進される点からも有用性が高いと期待されている。しかし、既存の点眼液と同様に結膜充血、虹彩色素沈着などの副作用発現に十分注意する必要がある。また薬剤使用に際しては、清潔な状態で1回片眼毎に同梱の使い捨て専用アプリケータを使用することなどを患者に指導しなければならない。