2014年6月4日、多発性硬化症治療薬ナタリズマブ(商品名タイサブリ点滴静注300mg)が発売された。本薬は3月24日に製造販売が承認され、5月23日に薬価収載されている。適応は「多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制」であり、用法・用量は「1回300mgを4週に1回1時間かけて点滴静注」となっている。

 多発性硬化症(MS)は、中枢神経系における脱髄巣を特徴とする自己免疫性の炎症性疾患。末梢で活性化された自己反応性T細胞が血管内皮細胞を介して中枢神経系へ移行し血液脳関門が破綻することから始まって、さらなるリンパ球と単球の動員、炎症性サイトカインの放出、液性免疫の増強など一連の局所的な炎症性反応が起こり、脱髄に至ると考えられている。

 MSに対する治療としては、急性期治療、再発及び進行防止を目的とした治療、個々の症状に対応した治療、リハビリテーションなどがある。薬物療法としては、急性期治療としてステロイドパルス療法、再発防止にはインターフェロンベータ製剤(商品名アボネックス、ベタフェロン)、フィンゴリモド(商品名イムセラ、ジレニア)が使用されている。

 今回発売されたナタリズマブは、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序を有した薬剤(ヒト化抗ヒトα4インテグリンモノクローナル抗体)である。具体的には、白血球に発現するα4β1インテグリンと血管内皮細胞に発現する血管細胞接着分子との相互作用を阻害することで、白血球の中枢神経系への侵入を防ぐ。

 本薬は2008年、希少疾病用医薬品に指定されており、2010年「医療上の必要性が高い未承認薬」として厚労省より開発要請がなされた。承認時までの海外及び国内臨床試験では、再発寛解型MS患者において再発抑制効果、疾患活動性抑制効果、身体機能障害の進行抑制効果が認められた。海外では、2006年6月欧州の主要国で承認されて以来、2014年3月現在、65カ国以上で承認されている。

 ナタリズマブは、4週に1回投与と既存の薬剤の中で最も投与頻度が少なく、患者の日常生活への負担を軽減できるのではないかと期待されている。

 国内の臨床試験では、34.4%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は疲労・発熱(各3.3%)、鼻咽頭炎・不規則月経・湿疹・帯状疱疹・血中アルカリホスファターゼ増加・アナフィラキシー反応・好酸球増加・マイコプラズマ感染(各2.2%)であり、重大な副作用としては進行性多巣性白質脳症(PML)、感染症、過敏症、肝障害が報告されている。