2014年3月24日、抗悪性腫瘍薬のトリフルリジン・チピラシル塩酸塩(商品名ロンサーフ配合錠T15、同配合錠T20)が製造販売承認を取得し、5月26日に発売された。適応は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」で、1日2回(朝食後および夕食後)経口投与する薬剤である。投与量は体表面積に応じて調節する。「5日間連続投与後2日間休薬。これを2回繰り返したのち、14日間休薬」を1コースとして投与を繰り返す。

 近年、日本の大腸癌死亡率および罹患率は著しく増加している。2012年の人口動態統計によれば、女性の大腸癌死亡は、部位別に見た全悪性新生物による死亡の中で最多であり、男性でも肺癌、胃癌に次いで多い。この50年間ほどで、大腸癌死亡は男女とも約10倍に増加している。

 この間、大腸癌治療薬の開発も盛んに行われており、血管内皮成長因子(VEGF)に対するベバシズマブ(商品名アバスチン)、上皮成長因子(EGFR)に対するセツキシマブ(商品名アービタックス)、パニツムマブ(商品名ベクティビックス)などの分子標的治療薬が登場している。さらに昨年、腫瘍や血管新生に関与する複数のプロテインキナーゼの活性を阻害する経口マルチキナーゼ阻害薬であるレゴラフェニブ(商品名スチバーガ)が臨床使用されるようになり、飛躍的に治療効果が向上してきている。

 ロンサーフの主成分であるトリフルリジンは、既存のフッ化ピリミジン系抗癌薬と同様、チミジル酸合成酵素を阻害すると共に、DNAに取り込まれることで腫瘍増殖抑制作用を発揮する。しかし、生体内での代謝が速やかであるなどの理由で単独使用が難しかった。そこで、トリフルリジン(FTD)の代謝酵素チミジンホスホリラーゼを阻害するチピラシル塩酸塩(TPI)をFTD:TPI=2:1のモル比で配合することで、FTDの血漿中薬物濃度を維持し、腫瘍増殖抑制作用を増強したのが本薬である。

 国内での臨床試験(フッ化ピリミジン系抗癌薬、イリノテカンおよびオキサリプラチンを含む前治療2レジメン以上の進行または再発の結腸・直腸癌患者を対象とした第2相臨床試験)では、全生存期間の延長効果などの有効性が確認されている。

 本薬の承認は全世界で日本が最初であり、標準的な治療が困難で治癒切除不能な進行または再発の結腸・直腸癌の治療で新たな選択肢となると期待されている。

 薬剤使用に際しては、承認時までの国内臨床試験において96.6%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、白血球減少(76.5%)、好中球減少(73.1%)、へモグロビン減少(63.9%)、悪心(63.0%)、食欲減退(55.5%)などであり、重大な副作用として、骨髄抑制、感染症、間質性肺疾患に注意する。また、フッ化ピリミジン系抗癌薬などとの併用で、重篤な骨髄抑制などの副作用が発現するおそれがある旨の警告がなされていることに留意しておく必要がある。