2014年1月17日、排尿障害治療薬タダラフィル(商品名ザルティア錠2.5mg、同錠5mg)の製造販売が承認された。適応は「前立腺肥大症に伴う排尿障害」で、1日1回5mgを経口投与する。成分のタダラフィルは、既に2007年9月から勃起不全治療薬(商品名シアリス)として、2009年12月からは肺動脈性肺高血圧症治療薬(商品名アドシルカ)として、臨床使用されている。

 前立腺肥大症に伴う排尿障害には、α遮断薬や5α還元酵素阻害薬(5-ARI)が標準治療薬として使用されている。α遮断薬は、前立腺と膀胱頸部の平滑筋緊張に関与するα1アドレナリン受容体を阻害し、前立腺による尿道の機能的閉塞を減少させる。また5-ARIは、5α還元酵素を阻害し、ジヒドロテストステロンの産生を抑制することで、前立腺肥大症に伴う尿道の機械的閉塞を軽減して、排尿障害を緩和する。

 しかしα遮断薬や5-ARIでは、時に有害事象が問題になる。具体的には、α遮断薬では、起立性低血圧、めまい、手術時の術中虹彩緊張低下症候群、射精障害・性欲減退などの性機能障害が認められることがあり、5-ARIでは、性機能障害関連の副作用(勃起不全、リビドー減退、射精障害)が比較的多く認められている。

 一方、今回承認されたタダラフィルは、既存薬とは異なる機序で、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する。すなわちタダラフィルは、尿道や前立腺の平滑筋細胞においてホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害することにより、局所のcGMPの分解を阻害し平滑筋を弛緩させる。これにより、下部尿路組織における血流及び酸素供給が増加し、前立腺肥大症に伴う排尿障害の症状が緩和されるものと考えられている。

 前立腺肥大症に伴う排尿障害患者を対象とした日本人を含む臨床試験(LVIA、LVHB、LVJF試験)では、前治療の有無や原疾患の重症度、年齢にかかわらず、タダラフィルは幅広い患者層に投与可能であり、有効だったことが確認されている。今回の適応では、2011年10月に米国で、2012年10月に欧州で承認されている。

 本薬は、承認時までに、消化不良、頭痛、CK上昇、筋肉痛、ほてりなどの副作用が認められており、さらにStevens-Johnson症候群を含む重大な過敏症(発疹、蕁麻疹など)も報告されているので、使用時には十分な注意が必要である。なお前述の通り、同成分の勃起不全治療薬および肺動脈性肺高血圧症治療薬が臨床使用されているが、今回承認されたザルティアは「前立腺肥大症に伴う排尿障害」に使用した場合のみ、保険適用できることに留意しておかなければならない。