2014年1月17日、抗悪性腫瘍薬アファチニブマレイン酸塩(商品名ジオトリフ錠20mg、同錠30mg、同錠40mg、同錠50mg)の製造販売が承認された。適応は「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」であり、用法・用量は「成人1日1回40mgを空腹時に経口投与。1日1回50mgまで増量可」となっている。

 年齢別にみた肺癌の罹患率及び死亡率は、ともに40歳代後半から増加しはじめ、高齢になるに従い増加する。死亡率の年次推移は、1960〜80年代に急激に増加したが、1990年代後半から男女とも若干の減少傾向が認められている。とはいえ肺癌は、悪性腫瘍の中では男性の死因の第一位となっており、肺癌患者の生存率が比較的低いことはよく知られている。

 肺癌の80%以上が「非小細胞肺癌」であり、発見時には既に遠隔転移を来している症例も少なくない。かつて、この非小細胞肺癌の化学療法ではプラチナ(CDDP)製剤が主流であったが、その後、癌細胞の増殖に関与する上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを選択的に阻害するゲフィチニブ(商品名イレッサ)、エルロチニブ(商品名タルセバ)が臨床使用されるようになり、治療成績も飛躍的に向上した。

 今回、承認されたアファチニブも、上記のゲフィチニブなどと同様に、EGFRに対するチロシンキナーゼ阻害作用を有する薬剤である。しかし、既存薬がチロシンキナーゼに対して可逆的な阻害作用を示すのとは異なり、アファチニブは不可逆的な阻害作用を示すのが特徴である。具体的には、EGFRのチロシンキナーゼドメインのATP結合部位に共有結合して不可逆的に阻害することで、癌細胞の増殖を抑制するとともにアポトーシスも誘導し、抗腫瘍効果を発揮する。

 海外での臨床試験[国際共同第III相臨床試験(1200.32試験);標準治療をペメトレキセド(商品名アリムタ)+CDDPとして比較検討]で、無増悪生存期間中央値が標準治療群6.9カ月に対してアファチニブ群11.1カ月と有意に延長したことが報告されている。

 また、アファチニブは、エルロチニブと同様、20mg錠、30mg錠の低用量規格が用意されており、副作用発現時に減量が可能であることも特徴の一つとなっている。海外においては、2014年1月現在、国・地域により承認内容が異なるものの、米国やEUなど40以上の国と地域で承認されている。

 薬剤使用に際しては、承認時までの臨床試験において、ほとんどの症例で副作用が認められていることに十分な注意が必要である。50%以上に認められるのは、下痢、発疹、爪囲炎、口内炎などであり、重大な副作用としては、間質性肺炎、重度の下痢、重度の皮膚障害、肝不全、肝機能障害、心障害、皮膚粘膜眼症候群、消化管潰瘍、消化管出血が報告されている。