2014年1月17日、慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療薬のリオシグアト(商品名アデムパス錠0.5mg、同錠1.0mg、同錠2.5mg)が製造承認を取得した。適応は「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」であり、1回1〜2.5mgを1日3回、経口投与する。

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、肺高血圧症(PH)の一種であり、進行性で致死性の疾患である。肺血管に生じた血栓により徐々に肺動脈圧が上昇し、右心不全をきたすと考えられている。急性肺血栓塞栓症からCTEPHへ移行する場合もあるが、発症機序は完全には解明されていない。

 PHでは、内皮機能不全や一酸化窒素(NO)の合成障害により、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)への刺激が不十分となる。sGCは心肺系にみられる酵素であり、一酸化窒素(NO)の受容体である。sGCがNOと結合することにより、sGCによる環状グアノシン一リン酸(cGMP)の合成が促進されることが知られている(NO-sGC-cGMP経路)。cGMPは、血管拡張、増殖、線維化、炎症を調節する重要な役割を担っている。

 これまで、CTEPHの治療では、肺血管から血栓と瘢痕組織を外科的に除去する「肺動脈血栓内膜摘除術」(PEA)が標準的に行われてきた。しかし、20〜40%のCTEPH患者は手術不可能といわれ、さらに一部の患者(最大35%)ではPEA後もPHが持続または再発する。こうしたことから、CTEPHに対する効果的な治療薬の開発・承認が必要とされていた。

 リオシグアトは、sGC刺激薬と呼ばれる、新しい作用機序を有する世界初の薬剤である。sGCを刺激し、NO-sGC-GMP経路を回復させることでNOの欠乏に対処し、結果的にcGMP産生を向上させる。

 リオシグアトは、国際共同試験などの臨床試験で、手術不適応または持続/再発がみられたCTEPHに対する有効性が確認されている。海外では、2013年10月に米国(適応:CTEPHおよび肺動脈性肺高血圧症)、同年9月にカナダ(適応:CTEPH)、同年11月にスイス(適応:CTEPH)で承認されており、現在はEUにおいては製造承認を申請中である。

 リオシグアトの使用に際しては、事前に治療ガイドラインを参考に投与の要否を検討しなければならない。また、承認時までの臨床試験で、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が62.0%に認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、頭痛(19.0%)、消化不良(14.7%)、浮動性めまい(13.3%)、低血圧(8.8%)などであり、重大な副作用としては喀血(0.2%)、肺出血(頻度不明)に注意する。