2013年9月12日、抗悪性腫瘍薬のペルツズマブ(商品名パージェタ点滴静注420mg/14mL)が発売された。本薬は、既に6月28日に製造承認を取得し、8月27日に薬価収載されている。適応は「HER2陽性の手術不能又は再発乳癌」であり、トラスツズマブおよび他の抗悪性腫瘍薬と併用して使用する。

 日本における乳癌の新規罹患患者数は年々増加しており、2015〜2019年の年間新規罹患患者数は約6万人と推定されている。乳癌患者の約20%は、悪性度が高いヒト上皮細胞増殖因子受容体2型(HER2)が陽性とされる。HER2は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)ファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼであり、細胞の増殖、分化等を調節すると考えられている。乳癌などの腫瘍細胞ではHER2蛋白及びHER2遺伝子の増殖が認められており、HER2陽性乳癌に対しては、HER2をターゲットとしたトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)やラパチニブ(商品名タイケルブ)が国内外で使用されている。

 ペルツズマブは、トラスツズマブと同じヒト化HER2モノクローナル抗体である。ただし、HER2の細胞膜近接部位のドメインIVに結合するトラスツズマブと異なり、HER2の二量体形成に必須なドメインIIに結合し、ヘテロ二量体形成を阻害することなどにより腫瘍の増殖を抑制する。このことから、HER2受容体の異なる部位を標的とするペルツズマブとトラスツズマブはそれぞれの作用を相互に補完するする薬剤として考えられており、併用によりHERシグナル伝達系をより広範囲に遮断するものと期待されている。

 日本も参加した多国籍無作為化プラセボ対照二重盲検第3相臨床試験(CLEOPATRA試験)では、HER2陽性の手術不能または再発乳癌に対して、ペルツズマブとトラスツズマブ及びドセタキセル(商品名タキソテール他)を併用した群(ペルツズマブ併用群)が、ペルツズマブを併用しない群よりも有効であったことが確認されている。有害事象に関しては、トラスツマブおよびドセタキセルにおいて報告されているものと同様であり、ペルツズマブ併用による有害事象の顕著な増加は認められなかったと報告されている。

 ただし薬剤使用に際しては、トラスツズマブなどと同様、投与中の患者の状態を十分観察し、心不全などの重篤な心障害やInfusion reactionなどの発現に細心の注意を払う必要がある。