2013年8月27日、口腔粘膜吸収癌性疼痛治療薬のフェンタニルクエン酸塩(商品名イーフェンバッカル錠50μg、同バッカル錠100μg、同バッカル錠200μg、同バッカル錠400μg、同バッカル錠600μg、同バッカル錠800μg)が薬価収載された。本薬は、既に6月28日に製造承認を取得している。上顎臼歯の歯茎と頬の間に入れて溶解させ、成分を口腔粘膜から吸収させる。適応は、「強オピオイド鎮痛薬を定時投与中の癌患者における突出痛の鎮痛」となっている。1回50μgもしくは100μgから開始し、1回800μgまで増量でき、効果不十分な場合は、投与後30分後以降に同一用量を1回追加投与できる。1日当たり4回以下の突出痛に対する使用にとどめること、とされている。

 フェンタニルは、選択的μオピオイド受容体作動性のオピオイド鎮痛薬である。分子量が小さく脂溶性が高いことから、皮膚からの吸収が良好であり、既に、3日間有効な経皮吸収製剤(商品名デュロテップMTパッチ)や、経皮薬物送達システム(Transdermal Drug Delivery system;TDDS)技術により24時間の安定した血中濃度が維持できるテープ製剤(商品名フェントステープ)が臨床使用されている。

 癌性疼痛の緩和療法では、強オピオイド鎮痛薬を定時投与していても、一時的に増強する痛み(突出痛)に対しては速放性製剤のレスキュー・ドーズが必要となる。レスキュー・ドーズには、経口モルヒネ製剤(商品名オプソ)や経口オキシコドン製剤(商品名オキノーム)が主に使用されているが、現在広く癌性疼痛治療に使用されているフェンタニル貼付製剤(商品名デュロテップMTパッチなど)の使用患者からは、フェンタニルの速放性製剤が望まれていた。

 今回薬価収載されたイーフェンバッカル錠は、フェンタニルの口腔粘膜吸収剤である。口腔粘膜からのフェンタニル吸収率を高める技術(OraVescent)が採用されている。海外では、2006年9月に米国で承認されて以降、2012年12月現在、世界33カ国で承認されている。なお、同じフェンタニルの口腔粘膜吸収製剤である「アクレフ」が2011年3月に薬価収載されているが、2013年8月末現在、発売されていない。

 イーフェンバッカル錠の使用に際しては、従来の経皮吸収製剤と同様、フェンタニルが肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4で代謝されることから、この酵素に影響を与える薬剤との相互作用には十分な注意が必要である。臨床試験では、承認時までに何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が41.5%に認められている。主な副作用は、眠気・傾眠(17.1%)、悪心(8.3%)、嘔吐及び浮動性めまい(各6.8%)などで、重大な副作用としては、依存性、呼吸抑制、意識障害、ショック、アナフィラキシー、痙攣などが認められている。