2013年5月14日、抗ウイルス化学療法薬のスタリビルド配合錠(一般名:エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩)が発売された。本薬は、既に3月25日に製造承認を取得し、4月16日に薬価収載されている。適応は「HIV-1感染症」で、用法・用量は「成人に1回1錠を1日1回、食事中または食直後に経口投与」となっている。

 2013年3月現在、日本で使用できる抗HIV薬としては、7種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、4種類の非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、8種類のプロテアーゼ阻害薬(PI)、1種類のインテグラーゼ阻害薬(INSTI)、1種類の侵入阻害(CCR5受容体拮抗)薬がある。

 HIV感染症治療では、世界的に、抗ウイルス薬を3〜4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が主流になっている。ARTの進歩により近年、HIV感染者の生命予後は著しく改善されてきたものの、一方で、体内からHIVを完全に排除することは事実上不可能であることから、感染者は生涯治療を継続しなければならない。

 また、HIV感染症治療では、抗HIV薬により血漿中HIV RNA量を検出限界以下に抑制し、その状態を維持し続けることが目標となる。その意味でも、患者の服薬コンプライアンスを高く維持することが重要であり、患者がより服薬しやすいように、服薬回数や服薬錠数を少なくした薬剤の開発が望まれていた。

 今回発売されたスタリビルドは、1錠中にINSTIのエルビテグラビルを150mg、薬物動態学的増強因子(ブースター)のコビシスタットを150mg、NRTIのエムトリシタビンを200mg、テノホビル ジソプロキシフマル酸塩を300mg、それぞれ配合した薬剤である。このうち、NRTIのエムトリシタビン(商品名エムトリバ)とテノホビル ジソプロキシフマル酸塩(商品名ビリアード)は日本でも使用可能な抗HIV薬であり、この2剤を配合した薬剤(商品名ツルバダ)も臨床使用されている。

 スタリビルドに配合されたコビシスタットは、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3Aの選択的な阻害薬である。本成分を配合することで、CYP3Aで代謝されるエルビテグラビルを薬物動態的に増強(ブースト)して血中濃度を維持し、1日1回投与でもエルビテグラビルの抗ウイルス作用が発揮されるようにしている。他に配合されているNRTIのエムトリシタビンとテノホビルが元々、1日1回投与で効果を発揮する薬剤であることから、スタリビルドで1日1回1錠投与が実現している。

 本薬の登場により、患者の服薬錠数や服薬回数が減り、服薬コンプライアンスの向上が期待できる。標準的な初回治療を対照群とした2つの第3相試験では、いずれもスタリビルド投与群で、対照群との非劣性が確認されており、2013年4月現在、米国(2012年8月発売)をはじめとして世界5カ国で臨床使用されている。

 承認時までの海外における臨床試験では、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が47.1%認められている。主な副作用は、悪心(15.7%)、下痢(12.1%)、異常な夢(8.7%)、頭痛(7.1%)、CK増加(6.6%)などであり、重大な副作用としては腎不全または重度の腎障害、膵炎、乳酸アシドーシスへの注意が必要となる。