2012年11月22日、抗悪性腫瘍薬のカルムスチン(商品名ギリアデル脳内留置用剤7.7mg)が薬価収載され、近く発売される見込みである。本薬は、9月28日に製造承認を取得している。適応は「悪性神経膠腫」であり、用法・用量は「成人に、腫瘍切除腔の大きさや形状に応じて61.6mg(本剤8枚)、または適宜減じた枚数を脳腫瘍切除術時の切除面を被覆するように留置」となっている。

 原発性脳腫瘍の30%を占める「神経膠腫」(グリオーマ)は、星細胞腫、欠突起膠腫、上衣腫、脈絡乳頭腫、髄芽腫などに分類される。症状としては、頭蓋内圧亢進による頭痛、吐き気、嘔吐などのほか、腫瘍が生じた部分の脳の働きが障害されることで、片麻痺や失語なども起きる。

 一般に神経膠腫は、周囲へ浸潤するように拡がるため、正常脳との境界が明確でなく、手術による全摘出は難しいといわれている。このため神経膠腫の治療では、再発予防を目的に、術後に放射線療法や化学療法を行うのが一般的である。

 術後の化学療法において、わが国では、ニムスチン塩酸塩(商品名ニドラン)などのニトロソウレア系のアルキル化薬が使用されてきたが、海外では同じ系統のカルムスチンの注射製剤が使用されている。ニムスチンに比べて、カルムスチンの方が脂溶性が高く、血液脳関門を良く通過するため、脳腫瘍に対してはカルムスチンの方が有効性が高いとされるが、脳内で腫瘍細胞に効果を発揮する濃度に達するには高用量投与が必要なため、それによる骨髄抑制や肺毒性等の重篤な全身的副作用発現が問題となっていた。

 今回、薬価収載されたギリデアルは、カルムスチンを生体内分解性ポリマー基材(ポリフェプロサン20)に含ませた、脳内留置用の徐放製剤である。海外では米国をはじめ、欧州諸国やアジア諸国など29カ国で承認されている。

 本薬は、注射薬に比べて、高濃度で脳腫瘍細胞に曝露できること、重篤な副作用発現が減らせること、術後に患部に留置できることなどが特徴である。手術後の標準療法(放射線療法、化学療法など)を開始するまでの治療空白期間に、治療が可能なこともメリットとなる。国内においては、厚生労働省の未承認薬使用問題検討会議(2008年9月)で審議され、2009年6月には希少疾病用医薬品の指定を受けている。

 本薬の使用に際しては、国内の臨床試験結果から54.2%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、脳浮腫(25.0%)、発熱・リンパ球数減少・片麻痺(不全片麻痺を含む)(各12.5%)、悪心・嘔吐・食欲減退・頭痛・ALT増加(各8.3%)などであり、重大な副作用としては、痙攣、大発作痙攣、脳浮腫、頭蓋内圧上昇、水頭症、脳ヘルニア、創傷治癒不良、感染症、血栓塞栓症、出血に注意が必要である。