2012年11月22日、尿素サイクル異常症用薬のフェニル酪酸ナトリウム(商品名ブフェニール錠500mg、同顆粒94%)が薬価収載され、近く発売される見込みである。本薬は2008年9月に希少疾病用医薬品に指定され、2012年9月28日に製造承認を取得していた。適応は「尿素サイクル異常症」で、用法・用量は「1日9.9〜13g/m2(成人および体重20kg以上の小児)、1日450〜600mg/kg(体重20kg未満の新生児、乳児および小児)、いずれも3〜6回分割で、食事または栄養補給とともにもしくは食直後に経口投与」となっている。

 尿酸サイクル異常症は、アンモニアを解毒し尿素に変換する代謝経路(尿素サイクル)の酵素(カルバミルリン酸合成酵素、オルニチントランスカルバミラーゼなど)に遺伝的な欠損が生じるために発症する先天性代謝異常症である。高アンモニア血症により中枢神経障害を呈し、死亡にいたることもまれでない重篤な疾患である。日本での罹患者数は約200人で、出生児4万6000人に1人が乳幼児期に発症すると推定されている。また日本の疫学調査(1978年〜1995年末)では、5年生存率が、新生児発症型尿素サイクル異常症(生後28日以内発症)で22%、遅発型尿素サイクル異常症(生後29日発症)で41%であったとされている。

 尿素サイクル異常症に対する治療では、高アンモニア血症の発症を予防する目的で食事療法のほか、物理的除去法や外科的治療も行われるが、薬物療法としては、(1)残存する尿素サイクルを利用して残存尿素を排泄する、(2)尿素サイクル以外の系で残余窒素を排泄する──の2つの方法がある。

 このうち(1)に関しては、日本ではアルギニン製剤(商品名アルギU配合顆粒、同点滴静注)が臨床使用されている。しかし、この製剤には、アルギナーゼ欠損症(投与禁忌)や尿素サイクルの完全酵素欠損症の患者で十分な効果が得られないという問題があった。一方、海外では(2)の尿素サイクル以外の系を利用する治療として、フェニル酪酸ナトリウムが長期管理の標準治療法として用いられてきた。しかしこれまでは、フェニル酪酸ナトリウムが日本では国内で入手できなかったため、必要な場合には海外から輸入して使用していた状況だった。

 フェニル酪酸ナトリウムは、生体内で速やかにフェニル酪酸となり、尿素サイクルと異なる代替経路によってグルタミンを尿中に排泄させることで、血中アンモニアの上昇を抑制する作用がある。海外では、1996年に米国、1999年に欧州で承認されており、アジアでは台湾、韓国で承認・臨床使用されている。

 投与に際しては、承認時までの国内第1/2相臨床試験において45.5%に何らかの副作用が認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、高アンモニア血症(36.4%)、脱毛症(27.3%)、アミノ酸濃度減少・人格変化・運動失調・頭痛・腹部不快感・悪心・流涎過多・肝機能障害・発疹(各9.1%)であった。