2012年11月22日、抗悪性腫瘍薬のパゾパニブ塩酸塩(商品名ヴォトリエント錠200mg)が薬価収載され、同日発売された。本薬は、2011年11月16日に希少疾病用医薬品の指定を受け、2012年9月28日に製造承認を取得していた。適応は「悪性軟部腫瘍」であり、用法・用量は「1日1回800mg、食事1時間以上前又は食後2時間以降に経口投与」となっている。

 悪性軟部腫瘍は、脂肪、筋肉、神経、血管などの軟部組織に発生する悪性腫瘍であり、予後不良の重篤な疾患である。2008年時点では、日本における罹患患者は約3000人と推定されている。

 国内で悪性軟部腫瘍の適応を有している抗悪性腫瘍薬は、ドキソルビシン塩酸塩(商品名アドリアシンほか)とイホスファミド(商品名イホマイド)のみで、これまで治療には、これらの薬剤が標準的に使用されてきた。しかし、これらの薬剤が何らかの理由(禁忌など)で使用できない患者や、既存の治療後に病勢が進行した場合には、使用できる薬剤がないのが現状であった。このことから臨床現場では、こうした状態下においても使用できる、有効性の高い薬剤の開発・承認が強く望まれていた。

 今回承認されたパゾパニブは、悪性軟部腫瘍に適応を有する、初めての分子標的治療薬である。血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)ならびに幹細胞因子受容体(c-Kit)に対する阻害作用を持ち、マルチキナーゼ阻害薬に分類される。VEGFRおよびPDGFRのリガンドである血管内皮増殖因子(VEGF)および血小板由来増殖因子(PDGF)は、悪性軟部腫瘍の多くで発現しており、悪性度との関連性が報告されている。さらに悪性軟部腫瘍には、他の重要な受容体型チロシンキナーゼ(c-Kit、線維芽細胞増殖因子受容体[FGFR])など)も存在している。

 パゾパニブの国際共同第III相試験(対象は、アントラサイクリン系薬剤を含む前治療において病勢進行が認められた転移を伴う悪性軟部腫瘍患者)では、プラセボと比較して無増悪生存期間を約3カ月間、延長したことが確認されている。

 海外においてパゾパニブは、進行性腎細胞癌の適応で2009年10月に米国、2010年に欧州で条件付きで承認されている。また悪性軟部腫瘍への適応では、2012年4月に米国、同年8月に欧州で承認されている。なお日本では現在、腎細胞癌および卵巣癌を対象とした臨床試験が進行中である。

 国際共同第III相試験では、パゾパニブ服用者の91.3%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、下痢(54.2%)、疲労(52.5%)、悪心(48.3%)、高血圧(39.2%)、毛髪変色(38.8%)、食欲減退(34.2%)、体重減少(30.4%)などであった。また、肝不全・肝機能障害など、多くの重大な副作用が認められていることから、投与に際しては事前に最新の添付文書を確認する必要がある。